米外交問題評議会の国家情報問題フェローのMichael P. Dempseyが、12月3日付けニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説で、米軍が大幅に撤退すればアフガンはISやアルカイダなどのテロリストの安全な隠れ場所になるとの想定は、考え直すべきである、と言っています。要旨は以下の通りです。
米軍が大幅に撤退すればアフガンはISやアルカイダなどのテロリストの安全な隠れ場所になるという想定は、オバマ政権の国家安全保障会議でも、さる8月のアフガンについてのトランプの演説でも強調された。
しかし、この想定を考え直すべき5つの理由がある。
第一は、タリバンがアフガン全土を占領できないことである。タリバンはアフガンの領土の多くを実効支配しているとはいえ、その戦力はアフガンの治安部隊、特に特殊部隊に劣るうえ、例え米軍が大幅に撤退しても、米国や西側は財政、情報の提供、軍事的助言の面でアフガン政府を支援し続けるだろう。
事実タリバンは和平協議を望んでおり、タリバンの最も重要な支援者であるパキスタンも、タリバンのカブール占拠を望んでいない。
第二は、タリバンの指導者が、タリバンの支配地域を国際テロ組織が使うのを許さないと言っていることである。タリバンは9.11前、アルカイダをかくまって、米軍の破壊的攻撃を受けた苦い経験をしている。
第三に、タリバンとISはお互いに毛嫌いしている。タリバンはアフガンに根付いており、関心は国際的であるよりはアフガンにある。
他方アルカイダの今の関心はシリアとイエメンであり、南アジアではない。
第四に、アラブの春以降、国際テロ組織にとって、シリア、リビア、イエメン、シナイ半島などアフガンより有利な安全な隠れ場所がいくつもできた。
最後に、9.11以降、米国のテロ対策と本土防衛能力は飛躍的に向上し、アフガンで訓練されたテロリストが米国に渡って攻撃するというモデルは最早想像しにくい。テロリストの細胞が、ロンドン、パリやブリュッセルのアパートからコンピューターを使って米国を標的にすることの方があり得る。
以上を前提にすれば、米国の政策はどうあるべきか。
最近の4,000人の増派はアフガン政府がタリバンに対抗する一助にはなるだろうが、タリバンを打ち負かすことはできないだろう。増派はガニ大統領の士気は高めるだろうが、アフガンの諸グループ間の権力争いによる政治的停滞は解消しないだろう。
また、増派が国際テロとの戦いに貢献するかどうかは分からない。
年400億ドルの出費と、米兵のさらなる犠牲の恐れを考えると、タリバンとテロの脅威に関する想定を厳しく再吟味すべきである。米国がアフガンで何を達成したいかを明らかにするときである。
出典:Michael P. Dempsey,‘No Longer a Haven for International Terrorists’(New York Times, December 3, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/12/03/opinion/no-longer-a-haven-for-international-terrorists.html