2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月19日

 論説はイラン・サウジの対立の経緯を要領よくまとめています。

 イラン、サウジがアラブの春に不安を感じ、その結果攻撃的行動を取り、両国の対立が高まったというのはその通りでしょう。

 オバマがイランとの核交渉を最優先させ、サウジが、米国は軸足をサウジからイランに移したと懸念し、イラン・サウジの対立を激化させたとの指摘と、イランと対決しサウジを無条件で支持するというトランプの政策が事態を一層悪化させているという指摘は、その通りでしょう。

 イラン・サウジの対立の緩和につき米国のできることは幾つかあります。

 米国のイラン敵視は、おそらく米国と緊密な関係にあるイスラエルとサウジの影響を受けていると思われますが、中東を不安定にさせるものであり、生産的ではありません。トランプはなによりもイラン核合意を破棄すべきではありません。破棄すればイランは核開発を再開し、おそらくサウジは核武装を試みるでしょう。そうなれば中東情勢は一気に不安定化します。

 米国はイランと何らかの対話を試みるべきです。イランはイエメンへの武器輸出は止めないかもしれませんが、シリアでイスラエルとの国境を刺激しないようにとの話しかけはすべきでしょう。

 米国は、サウジとの友好関係はサウジに対する白紙委任状ではないことを明確にすべきです。サウジはイエメンについては聞く耳を持たないかもしれませんが、カタールやレバノンでとったような行動については、事前に米国と協議すべきであるとの要請はサウジにとって受け入れられないことではありません。

 トランプ政権がイラン・サウジの対立にどう対処するかは、トランプ政権の中東戦略の一環ですが、果たしてトランプの頭の中に中東戦略があるのか疑わしいです。一つの望みはトランプが軍人を重視していることです。マティス国防長官をはじめ軍関係者が中心となって、中東政策の推進役を務めればトランプもついていくのではないでしょうか。

  
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