2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月21日

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、11月19日付け同紙に「米国はシリアにおけるイランの次の動きに準備しなければならない」との論説を書き、イランがシリアで勢力拡張を目指していることに警鐘を鳴らしています。論旨は次の通りです。

(iStock.com/cloverphoto/Diy13)

 トランプ政権が南シリアでの戦闘凍結合意を祝賀するなか、アサド政権とイランはシリア全土を支配下に置く戦いの準備をしている。米国はこれを認識し、対抗すべきである。

 イランは何千人もの戦闘員を新たに獲得した領土に送り込み、軍事基地を作っている。米国が支持する勢力がシリア南西部のユーフラテス川の東の領土とイスラエルとヨルダンとの国境地帯を保持しているが、イランはアサドの全領土支配を助けると言っている。

 イランの革命防衛隊のソレイマニ将軍は最近デリゾールに現れ、イランが石油の豊富なこの地域に高い優先度を付していることを示した。ソレイマニはまた、イラクとの国境の町、アブ・カマルにも現れた。この地点はイランがテヘランからベイルートへの陸路を作るにあたっての重要地点である。

 トランプ大統領とプーチンが「イスラム国(IS)」より解放された地域がアサドの支配下に入らないことを確保する合意を作ったとされているが、ラブロフ・ロシア外相は、ロシアはイランがシリアより兵を引くように求める気はないとしている。

 最近、外交・軍事関係の元高官のタスクフォースが、イランが解放された地域を奪取するのを阻止するために何をすべきかについて、次のような提言を作成した。

 第1:米国は明確なシリア政策を宣言すべきである。IS後、米国が撤退するとの疑念をなくすために、米軍は陸でも空でもプレゼンスを保ち、イスラム国が再出現しないこと、アサドがシリア全土をとらないこと、を確保すべきである。

 第2:トランプ政権はスンニ派共同体への支援を増強し、米国が支持する勢力がシリアの南西部の貴重な領土を保持するようにすべきである。

 第3:米国は地域の同盟国とともに、イランが兵器や兵力をシリアに運び込むことをやめさせるべきである。海上での阻止、米支持勢力による国境の町の支配が必要になる。

 米国には、シリアで長期的な軍事的役割を果たす意欲はない。しかし2011年のイラクからの撤退の教訓は、軍の指導者にはまだ新鮮である。マティス国防長官は、「イスラム国-Ⅱの出現を阻止するために米軍は居残る」と述べたが、イランの侵略阻止については言わなかった。

 米国の国家安全保障上の利益は明らかである。シリア各地での長期的なイラン支配は不安定化につながり、過激主義を盛んにし、危機を長引かせる。タスクフォースの事務局長は「米国の連合とパートナーがISを敗北させるうえで重要な役割を果たしたが、解放された地域をイランに渡すことは国の過激化につながる」という。

 シリア危機に軍事的解決はないと言う。それは真実である。しかしイランとアサドが軍事的勝利を目指している中で、外交的解決が不可能であることも真実である。

出典:Josh Rogin,‘The U.S. must prepare for Iran’s next move in Syria’(Washington Post, November 19, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/the-us-must-prepare-for-irans-next-move-in-syria/2017/11/19/c8ee0906-cbc0-11e7-8321-481fd63f174d_story.html


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