2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年1月19日

 もう一つ、対米関係とは違った次元で、中国国内の政治状況を見る上でたいへん重要なポイントが、今回の出来事から見えてきたのである。要するに、党の総書記と軍事委員会主席の胡錦濤は、軍の行動をまったくコントロールできていないということである。それは、中華人民共和国が成立して以来、確立されているはずの「党の軍に対する絶対的指導権」という原則が崩れ始めたことを意味する。中国の軍というのはもともと「超法規」的な存在で、今まで、「党の指導」以外に軍を統制するいかなる法律も力を持たなかったのだが、肝心の「党の指導」が崩れてしまうと、軍の独走や暴走を止めるような現実の力はこの国にはもはや存在しない。それは中国自身にとってだけでなく、日本を含めて周辺国にとっても大変憂慮すべき深刻な事態である。

 われわれは今後、中国軍の動向を注意深く警戒していかなければならないのであろう。

本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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