2024年12月5日(木)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2018年3月7日

リチウム資源もコバルト資源も不足する

 コバルト資源の問題点はすでに言及したので、今回はリチウム資源について書いてみたい。中国のEV販売の急伸、テスラのギガファクトリーの稼動によって、リチウム需要も急拡大している。従来の主なリチウム供給源であった「塩湖かん水」由来のリチウムでは、急な需要増大には追い付かず、よりコストの高いスポジュメン(リシア鉱石)由来のリチウム資源の開発が進んでいる。

 このスポジュメンから分離したリチウムを電池グレードの炭酸リチウムに精製する加工業者の大半は、中国に集中している。中国では国内での電池向けリチウムの需要が非常に強く、リチウム市況が高騰している。

 こうした現象は、タングステンやレアアースといった他のレアメタルと似ており、リチウム資源がレアメタル化したことを再認識させる。中国での生産・消費のシェアが高い資源は、中国国内での投機や政策の影響を受けやすく、急騰する事態が頻発することになる。

 チリのアタカマ塩湖からリチウムを生産しているのは、チリ鉱業化学会社(SQM)と、ドイツのRockwood Lithiumの2社である。アルゼンチンの塩湖では米国のFMC Lithiumが生産している。

 スポジュメン鉱石から生産しているのは豪州のGreenbush鉱山のTalison Lithiumである。スポジュメン鉱石はリチウム含有量が低いので精製に手間がかかり、かん水と比べるとコスト高である。一方のかん水も塩湖からの天日干しに時間とコストがかかるために簡単には増産ができない。

 現時点で需給はバランスしているが、リチウムイオン電池が大増産されるなかで、供給不安が顕在化しつつある。ボリビアのウユニ塩湖は鳴り物入りで日本と韓国が大開発の計画を出したが、ボリビア政府との調整はうまく進んでいないようだ。

 筆者にも数年前に経産省や多くの関係者からウユニ塩湖への調査出張の声がかかったが(南米に住んでいた筆者としては)開発は不可能であることが分かるだけに丁重にお断りさせて頂いた。

 塩湖の存在場所は標高4300メートルであり労働条件が劣悪であり、生産性の向上は期待できないことは言うまでもない。需要面の期待値が高くても、資源供給の難易度も高い。塩湖の湖水の面積を拡大することはできないため、ボトルネックになる。天日乾燥をしているかん水を燃料を使って乾燥させれば生産量は上がるが、エネルギーコスト高となり意味がない。

 このように見ていくと、EVや大型電池の需要量が伸びてもリチウム塩類の年生産が同じ比率で伸びることはありえないのだ。

 かん水には副産物のMgやNaが存在する。レアアース資源と同様にバランス産業であるため、仮にリチウム資源の増産が可能になっても余計な副産品(MgやNa)の処分ができなければリチウム産業の足を引っ張るのである。


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