キナバル山“強力伝”
登山道は整備されているので歩きやすいが、周囲の景色や珍しい熱帯高山植物を見るのも億劫になるほど上り坂の連続。小雨が断続的に降るので合羽を着たままで登る。昼食は休憩小屋のベンチで、ランチボックスを開けて食べた。昼食休憩以外は5分間程度の小休止を4~5回しただけの強行軍で午後5時過ぎにロッジ到着。
1泊2万円超の山小屋
ロッジ到着後直ぐに夕食。予想外に豪華なビュッフェだ。温水シャワーがあるが実際には冷水しか出ない。ソーラーパネル給湯システムなので、雨天が続くと温水が出ないとのこと。シャワーを断念して、共同寝室の二段ベッドに7時前にもぐり込む。
午前1時半起床。夜食を食べて霧雨のなか、午前2時半出発。途中で晴れて星空が広がる。7時半山頂へ辿り着く。360度の景色を楽しむ間もなく下山開始。
係員の“指示”には従いましょう
山頂からの下山の途中でガイドから再三「Watch your step. Walk slowly and carefully」と注意が飛んだ。前年の北ボルネオ地震で大規模な崖崩れが発生し、登山者十数人が犠牲になったという。崖崩れが発生した周囲は現在でも崩落の可能性があり危険であるよし。
ガイドが数カ月前の事故の教訓を語った。韓国人男子学生5人のグループで下山していた。担当していたガイドが何度も注意したが真剣に聞いておらず、巨大な一枚岩の下り坂で5人が競争を始めた。先頭を走っていた男子学生は危険の看板を無視して、近道の急勾配の斜面を駆け下りた。その瞬間、岩が崩れて男子学生は転倒。首の骨が折れて重傷を負った。ガイドは緊急無線で救急ヘリコプターを呼び、男子学生はKKの病院に緊急搬送された。応急処置を受けた後で、ソウルの病院に運ばれたが数日後死亡した。
ガイドによると最近韓国人の若者グループが増えているが、ガイドの指示を守らない人間がいると嘆いた。同じような話はKK近郊のタンジュン・アルのビーチでも聞いた。
中国人グループの観光客が急増して、海難事故が頻発しているという。彼らは言葉の問題もあり地元の監視員の注意を聞き流す。美しい南洋のビーチに興奮して、泳げないのにサーフィンの真似事をして波に巻き込まれたり、ボートに乗ってバカ騒ぎして転落して溺れるなどの事故などが頻発しているという。
エピローグ
山頂から下ること2時間。ロッジに戻り9時半朝食。10時半から延々と小雨とスコールの繰り返しの熱帯雨林のドロドロ道を下り午後三時半に登山口到着。
下山後一週間は極度の筋肉痛で、ゲストハウスの階段を手摺につかまって上り下りする有様であった。
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