前向きに読み解く経済の裏側

2018年3月26日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

長生きとインフレに強い公的年金

 公的年金が素晴らしい所の一つは、老後資金の最大の懸念材料である長生きに強い所です。年金は保険です。長生きをしてしまい、老後資金が底を突いてしまった人に老後の生活資金を支払うというものです。火災保険と本質は同じなのです。「火事にならなかったら損だから火災保険に入らない」という人は少ないでしょう。それと同じことなのですから、「年金保険料を払っても早死にしたら損だから年金保険料を払わない」などと言わずにしっかり払いましょう。

 公的年金の素晴らしい所の今ひとつは、老後資金の今ひとつの懸念材料であるインフレに強い所です。インフレになれば、その分だけ高齢者が受け取れる年金額も増えるので、年金だけで生活する場合にはインフレになっても生活水準が保てるのです。

 公的年金は、現役世代が高齢者を支える制度なので、インフレに強いのです。インフレになれば、現役世代の給料が増えるので、現役世代から高額の年金保険料を徴収して高齢者に支払うことができますから。

「将来は年金がもらえない」という心配は無用

 一方で、現役世代が高齢者を支える制度であるため、少子高齢化によって現役世代と高齢者の人数比が変化すると、高齢者が受け取れる年金が減ってしまいます。しかし、現役世代がゼロになるわけではないので、「高齢者が年金を受け取れない」ということはあり得ません。専門家たちも口を揃えてそうしたリスクは否定しています。

 筆者としては、別の説明も考えています。万が一年金が支払えなくなったら、高齢者からの生活保護の申請が激増し、財政は間違いなく破綻するでしょう。したがって政府は、年金が破綻しないように、万難を排するでしょう。年金以外のすべての支出を削っても、年金の支払いを優先するはずです。

 損得を考えても、公的年金はお得です。平均寿命まで生きるとすると、払った年金保険料よりも受け取る年金の方が多いからです。それは、老齢基礎年金(国民年金)の支払い原資の半分が税金だからです。民間保険会社は、払った保険料から保険会社のコスト等を差し引いた残りが保険金として支払われるので、期待値としては払った保険料の方が受け取る保険金よりも多いのですが、公的年金はそうではないのです。

 そうした事を総合的に考えると、公的年金は大事にすべきでしょう。若い人はしっかり年金保険料を支払いましょう。手続き漏れで払えていない人も、一部は後から払える制度もありますので、年金事務所に相談してみましょう。

 余談ですが、日本政府は借金が巨額だから破産するだろう、と考えている人もいるでしょう。筆者はそうは思いません。拙稿「日本の財政が絶対に破綻しない理由」をご参照いただければ幸いです。もっとも、読者の中には筆者と意見を異にする方も多いでしょうから、そういう方には、米ドルを買うことをお勧めします。日本政府が破産する時には、日本銀行券をドル札に交換しようと人々が殺到してドルが暴騰するだろうからです。

年金の受け取りは70歳まで待とう

 年金の受け取りは、65歳からが基本ですが、60歳と70歳の間で受け取り開始時期が選べます。60歳を選ぶと毎回の受取額が30%減り、70歳を選ぶと42%増えます。平均寿命まで生きれば70歳受け取りが得ですし、何より「長生きとインフレのリスクに強い公的年金」が増額になるのは非常に心強いことです。サラリーマン夫婦は、22万円の1.42倍あれば、老後の生活は安心でしょうし、自営業者夫婦も13万円の1.42倍あれば、最低限の生活は何とかやっていける安心感が得られるでしょう。是非とも検討してみましょう。

  
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