2024年11月23日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2018年4月1日

深夜の引っ越し作業

 施設への引っ越しの前日の19日夕刻、実家に様子を見に行くと、当人は何も荷造りをしていない。「老人ホームに入れられたら早死にする。住み慣れた家で老後はゆっくり1人暮らしをするのが一番だよ。引っ越しは絶対にしない」と頑として動かない。

 最初は激高して喚いていたが、そのうちにメソメソと泣き出すという修羅場に。仕方ないので、代わりに深夜まで1人で衣類など身の回り品を中心に荷造り。それでも段ボール20個分くらいになった。翌朝、2月20日にトラックで引っ越し。

ブッダガヤの大仏の前で

 その後、実家の近隣にある内科、精神科、皮膚科等の“かかりつけ医”を回って診断書を作成してもらい入居する施設の近くの病院に引き継ぎ。さらに実家の近所への挨拶回り。ケアマネージャーへの連絡。さらに新聞・牛乳・宅食の解約等々をして実家を清掃。結局インド・ネパールへの出発の前日の深夜まで実家で片付け作業。出発当日早朝に自宅に戻り数時間仮眠してから旅行の荷造りをし、羽田空港に駆け付けるという慌ただしさであった。

旅行中も続くモヤモヤ

 東方航空便の最後部の座席で、年末年始からの日々を振り返っているうちにいつの間にか眠りに落ちていた。

 ちなみに1年経過した2018年1月現在、当人は施設での生活に至極満足している様子である。何事も結果オーライであれば結果責任を果たしたことになる。しかし、実は2カ月間のインド・ネパール旅行中は「単に自分が遊びたいから自分の都合に合わせて無理矢理に母親を施設に押し込めた」のではないかと自責の念で心中モヤモヤしていた。

ネパールのナガルコットから眺めるヒマラヤ

自宅は安らぎの場所ではない?

 4年前に定年退職して以来毎年のスケジュールはほぼ同じである。2月中旬、確定申告提出後直後に2~3カ月の旅に出る。帰国すると数週間日本でお金の遣り繰りや諸々の雑事や家事(庭木の剪定や物置の整理など)を片付け、さらに家内のご機嫌を取り結んで孫と遊んで次の2~3カ月の旅に出発する。このパターンを年末まで繰り返すのである。すなわち年間合計9カ月超を海外放浪している計算になる。

 自由気儘に好きなだけ海外放浪する代償として、短期間の日本滞在中は毎日朝から晩まで時間に追われる。次の旅の出発日から逆算して緻密な工程表を作る。毎日ノルマを達成しないと出発前数日間は徹夜状態となる。正直なところ日本滞在中にノルマに追われて精神的に疲れてしまうのは毎度のことである。ある意味、海外放浪生活が“常態”であり、日本滞在(自宅での生活)が“出張”のような感じになっている。

人生において何を優先させるか

 私は家庭人(家長?)そして社会人としての義務を果たすことを最優先すべきと考えている。義務を果たしてから初めて私人(=自由人)としてやりたいことをするという行動規範である。長期の海外放浪という自由時間を享受するために、短期間の日本滞在中は全力で義務を果たすというサイクルである。

⇒ 以上 第2回に続く

  
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