3月7日の公聴会では、米国の対アフリカ支援はどうあるべきかが議論された。中国がアフリカ連合の本部の建物やアフリカ諸国の大統領府等の箱ものや道路等大型インフラに投資するのに対して、米国はより人々の生活に密着した水道設備の完備等に支援しているということが指摘された。また、上記のスミス小委員長の発言にもあるように、中国は独裁者に賄賂を贈り独裁政権と密接にかかわっていることが識者からも言われた。一方、米国はアフリカ諸国にも民主主義が発展した方が長期的には良いと考えている。
米国議員が中国のアフリカへの進出を懸念しているのは、上記の例ばかりではない。米下院の諜報常設特別委員会のヌネス委員長も、中国がアフリカに軍事的に進出していることは、貿易にも影響を与えると警告を発している。彼は昨年に中国がジブチに基地を開設したことを挙げ、紅海の入り口にあるジブチに中国がいることは、貿易航路であるシーレーンを中国が妨害できてしまうと懸念する。中国は鉄道や港湾に投資するがアフリカへの借款は重くのしかかり、結局アフリカは高い費用を払うことになる、と指摘する。
米国政府自身も、アフリカに注目していないわけではない。オバマ大統領は2013年と2015年に、クリントン国務長官は2009年と2012年にアフリカを訪問した。オバマ大統領がアフリカ系米国人初の大統領ということもあり、彼のアフリカ訪問は歴史的なものとなった。現トランプ政権では、ティラーソン前国務長官が2018年3月初旬にアフリカを訪問している。
2018年3月7日付のワシントン・ポスト紙上では、ジョッシュ・ロウギン氏が「トランプ政権は、中国がアフリカの鍵となる港を掌握するのを止めることが出来るか」との論説を掲載した。その中で、ロウギン氏は中国はジブチに軍事基地を開設したが、それのみならず港湾の管理までしようとしている。ジブチ政府は港湾の拡張工事をシンガポールの会社と契約したが、その会社は中国政府の港湾会社と結びついていた、と述べている。何故、この港に中国が注目をしたかというと、その理由は自国の基地に近いというのみならず、そこが戦略拠点として、米国、フランス、イタリア及び日本の基地にとっても重要であり、米国がアフリカや中東で作戦を行う際にも使用するからである。ロウギン氏は、米国アフリカ司令官の軍事委員会公聴会における言葉を引用して、中国は軍事、経済、外交を駆使してアフリカ諸国を西側から離して、中国の一帯一路構想に組み込もうとしている、と述べた。そして、ジブチは既に12億ドルの負債を中国に対して抱え、それは増え続けていると言う。
中国のアフリカへの援助は北京と現地を直行便で結び、中国人労働者が現地で公共事業を請け負う等、大規模なものである。また、中国とアフリカとの関係は援助にとどまらず、貿易額でも著しく増えている。
一方、日本とアフリカの貿易はそれほど伸びていない。援助に関しては、借款が減り無償援助が大幅に増加した。技術援助はそれほど増えていないが、JICA等を通じアフリカの人々に直接かかわる支援は、現地でも評価が高いようだ。2010年の皇太子殿下のアフリカご訪問、2014年の安倍総理や秋篠宮同妃両殿下のご訪問、さらには自衛隊の南スーダンでの活動等は、日本の地道なアフリカ支援を後押しするものになっただろう。
日本の支援は米国のやり方とも類似していて、比較的、現地の人々の生活に根差したものである。中国のやり方とは随分と異なる。
今後、自国のためにアフリカを搾取している中国の巧妙なやり方に対抗するためには、日米共同や日本と欧州諸国との共同支援など、数か国で協力して真にアフリカの利益にかなうような支援を検討することも必要だろう。
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