粘着性と実利優先
これらに加えて金・トランプ両氏には、粘着性の気質と実利優先の傾向があります。例えば、金委員長は「できる」「強化する」「実現する」「発展する」「立ち向かう」という動詞や、「頼もしい」という形容詞を頻繁に使用して科学者を鼓舞し、先代が成し得なかった核・ミサイル開発を急がせたのです。「計画」という名詞も合わせて使いながら、目標に向かって粘り強く取り組む同氏のリーダー像がみえてきます。
トランプ大統領にも粘着性の気質をみることができます。例えば、メキシコとの国境の壁建設に対するこだわりです。トランプ氏自らが壁建設の予算をつけるように米議会に圧力をかけて、実現しようとしました。ところが十分な予算獲得が困難であると分かると、今度は軍事費から捻出してでも壁の建設をしようとしたのです。
トランプ大統領の粘着性に関する他の例も挙げてみましょう。過去に、トランプ氏は「オバマ大統領は外国生まれで大統領の資格がない」と繰り返し発言をしました。結局、ホワイトハウスがオバマ大統領の出生証明書の原本コピーを公表して決着しましたが、この時、同大統領の出生に関するトランプ氏のこだわりが顕著に出ていました。
次にイデオロギーと実利です。この点に関しても、金・トランプ両氏には類似点があります。金氏は思想及びイデオロギーを軽視しているわけではないのですが、どちらかと言えば実利的な面に価値を置いていると言われています。
金氏は競争の原理を取り入れ、豊かさは与えられるのもではなく自分から稼ぐものであるという「自強力」を活かした統治を行っています。同氏は、人民にこれまでの「公助」ではなく「自助」の精神を植え付けたいのでしょう。
トランプ大統領もイデオロギーよりも実利を重んじます。例えば、『同じNYっ子でもここまで違う、追うモラー、逃げるトランプ』で説明しましたが、トランプ大統領は1999年から2012年の間に、民主党に2回、共和党に3回、無所属に1回登録しています。演説でトランプ氏が「私は共和党保守だ」と主張する理由は、イデオロギーがないイメージを払拭する意図があるからです。
トランプ外交は、民主主義や自由を全面に出した価値外交というよりも、実利重視の取引外交であることは明白です。金氏と同様、トランプ氏もプラグマティック(実用的)な思考様式を備えています。