今回は、有限会社ビッグイシュー日本(本社・大阪市)の代表・佐野章二さんを取材した。同社はホームレスの人の仕事をつくり、社会復帰を支援する企業である。佐野さんが水越洋子(現編集長・共同代表)さんらとともに、2003年に設立し、同年9月に雑誌『ビッグイシュー日本版』を創刊した。『ビッグイシュー』誌は1991年に英国で創刊されており、その日本版となる。
『ビッグイシュー日本版』は、月2回(1日と15日)の発行。札幌、仙台、金沢、東京、神奈川、名古屋、大阪、京都、奈良、兵庫、岡山、熊本などで販売している。
路上で雑誌を販売する「ビッグイシュー販売者」は、1冊350円の雑誌を売れば、半分以上の180円が収入になる。2003年からの延べ登録者は約1800人で、現在は125人ほどが販売している。1人の販売者は1号につき、平均200冊ほどを販売し、収入は月7万円ほど。販売者の販売収入の累計は、11億9000万円となる。現在、発行部数は1号につき、2万5000部前後。
社会的起業家とも言われる佐野さんにとって、「使えない上司・使えない部下」とは…。
自分の腕で生きてきたのだから、
今さら、国の世話にはならない…
「使える、使えない」なんて言葉は、ビッグイシューでは使いません。私は、その言葉が嫌いです。人を機械やモノのように扱うニュアンスがありますから…。上司が部下のことを「使えない」と言っているならば、その方にこそ、問題があるように思います。上司として仕事をきちんと教えることもなく、「あいつはできない」とレッテルをはるのは簡単です。立場の弱い部下の責任にしていると、自分と向かい合うことをしなくてすみます。
私がここで働く職員や販売者を「使えない」と言っていたら、この事業は成り立たないのです。販売者として働くホームレスの人の多くは、まじめです。めちゃくちゃ、マジメですよ。彼らは、ビッグイシューの販売代理店のような立場であり、ビジネスパートナー、貴重な戦力です。
ここにはじめて来られるときに必ず、面談をするのですが、特に50~60代の方の中にはこう話される人がいます。「生活保護は受けたくない。国のお世話にはなりたくない。自分でできうる限り、働いて収入を得て暮らしていきたい」。