「ヘルシー」といってよいのは「低塩」だけ
動物性の食材でヘルシーと表現されるものには、鶏の胸肉やささ身がある(これはもも肉と比較される)。
豚の肩肉もバラ肉との比較で、ヘルシーと表現されることがある。
こちらは、低脂肪=低カロリー=ヘルシーという(よくある)構図に、プラスして「動物性脂肪が少ないので二重にヘルシー」という概念が入っているかもしれない。
動物性脂肪の過剰摂取は心臓病(虚血性心疾患)のリスクであることはわかっているが、適量の摂取は必要だ。
繰り返しになるが、動物性脂肪を過剰に摂取している人にとっては、動物性脂肪の少ない食材は「ヘルシー」だといえるが、そうでない人にとっては、それは別にヘルシーな食材ではない。
これは「他の栄養素」でも同じことがいえる。
栄養素に関して「ヘルシー」と表現されることが多いのは、脂肪が少ないこと・糖質が少ないこと・炭水化物が少ないこと・糖分が少ないことそして塩分が少ないこと等々(糖質と炭水化物の違いについては前回【http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12359】参照のこと)。
ここで重要な指摘をしておきたいのだが、「ヘルシー」と表現されるのが、それぞれの栄養素について“少ない”場合であることだ。
私たちは必要な栄養素を食品から摂取して生存しているのだから、常識的に考えれば含有量が“多い”ほうが「ヘルシー」であるはずだ。
いったい私たち日本人は、栄養成分をそんなに「とりすぎている」のだろうか? あくまでも平均値で見るしかないのだが、「日本人は各栄養素をこれくらい摂取するのがいい」という基準である『日本人の栄養摂取基準(2015年)』【※2】と、「日本人は現在これくらいの栄養素を摂取している」という『国民健康・栄養調査結果(平成27年)』【※3】とを比べてみると、明らかに過剰摂取であるのは食塩(塩分)くらいで、それ以外は「まあまあ」という範囲に入っている。
こういうデータからは「低塩」であれば、多くの日本人にとって「ヘルシー」といえるだろう。
逆に「不足している」栄養成分はカルシウムと食物繊維がある。
「低カロリー」ということではなく「食物繊維を多くとれる」という意味なら、いも類・豆類・海藻類・こんにゃく類・雑穀類・野菜類・果物類を「ヘルシー」といえないこともない。