飲酒による健康被害の「原因」には2種類がある
毎年やってくる忘年会シーズン。ちょうど1年前のこのコラムで「ビジネスパーソンのためのお酒の飲み方」を紹介した【※1】。今回は「飲酒習慣」と「健康」の関係をみてみよう。
大人ならみんな知っていることだが、飲酒をすると顔が赤くなる人とならない人がある。いわゆる「酒に強い人」と「弱い人」だ。酒の主成分はアルコール(エチルアルコール)だが、体内に入ったアルコールが飲んだ人の顔を赤くする作用は、それほど強くはない。
アルコールは(主として胃から)吸収されると、門脈という特別な血管を通って肝臓へと運ばれる。肝臓に運ばれたアルコールは(主として)アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドという物質に分解される。アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素によって(いったん酢酸に分解されたあと)最終的には水と炭酸ガスに分解されて体外へと排出される。
この中で最終的に生ずる水と炭酸ガスは(中間的に生ずる酢酸も)人体に悪さをしない。問題はアルコールとアセトアルデヒドの2つだ。とりわけ、アルコールが分解して生ずるアセトアルデヒドは、頭痛や悪心・嘔吐や二日酔いなどの原因となる。
アルコールも厄介だ。先ほど「アルコールは肝臓で分解される」と書いたが、基本的には、人体にとって好ましくない成分なので分解をするのだが、大量に入ってくると分解能力が追いつかず、肝臓を通過して(心臓を介して)全身へと送られる。その一部が脳へと到達する。
脳には、好ましくない成分をシャットアウトする機能があり、脳に必要な成分だけしかそこを通過できない。たとえれば、社長室に平社員や飛び込みの訪問販売などが平気で入ってこないようにしているシステムといえよう。しかし、なぜか、アルコールはこのシステムを容易に通過し、脳細胞へと達するようだ。脳細胞へと達したアルコールはいわゆる酩酊状態を引き起こす(もしかしたら、脳はコレを求めているのかも?)。多くの人が飲酒習慣に引きつけられるのは(そして最悪の場合はアルコール依存症に至ってしまうのは)このせいであろう。
【※1】「どんな酒でもたくさん飲めば悪さをする」http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8523