2024年4月20日(土)

イノベーションの風を読む

2018年5月7日

ハードウェア・アズ・ア・サービスのプラットフォーム

 では、自動車やコンシューマエレクトロニクスなどのハードウェアをつくる日本のメーカーは、この第三の波に呑み込まれてしまうのだろうか。少なくとも、ハードウェアを造って在庫し、需要を喚起して売るという、これまでのようなリニアなビジネスモデルのままで生き残るのは難しいだろう。

 トヨタが年初のCESで発表した、モビリティサービスプラットフォームという構想では、これまでユーザーが購入して所有していたハードウェア(自動車)を、サービスとして利用できるよう(ハードウェア・アズ・ア・サービス)にする。

 それは、一般のユーザー向けのモビリティサービスだけでなく、輸送や配達のための手段も事業者にオンデマンドで提供する。あらゆるサービスを移動可能に(モビリティ化)して、オンデマンドで利用できるようにすることも考えられる。例えば、ピザを配達するのではなく、ピザの店舗がオンデマンドで移動してやってくる。

 トヨタは、あらゆるモビリティサービスや、サービスのモビリティ化にカスタマイズできる、自律走行のEV(電気自動車)e-Palette Conceptも同時に発表している。

 トヨタは、ハードウェアを造って売るというビジネスモデルがソフトウェアに呑み込まれる前に、ハードウェアをサービスとして提供する、ウーバーなどのものとは異なる、メーカーならではの新しいプラットフォームを創り出そうとしているようだ。プラットフォームとは、価値を集めて提供する場であり、どのような価値をどのように集めるかによって、いろいろなモデルを考えることができる。

ハードウェア・アズ・ア・サービスのプラットフォーム

 このプラットフォームで提供する価値は、オンデマンドで利用できる、人や物の移動のための様々なモビリティサービスであり、それらは、トヨタが提供するAPIを使って、それぞれのモビリティサービス事業者が開発する。

 これは、アップルのiPhone(ハードウェア)と、そのアプリ(様々なサービス)の関係に似ている。トヨタはハードウェアの販売や、それぞれのサービスのためのハードウェアのカスタマイズ、運用管理やメンテナンスなどで利益を得ることができるだろう。そして、ユーザーに価値を提供する革新的なサービスは、iPhoneのアプリのようにスタートアップによって次々と生み出される。新しいサービスが生まれれば、それに連れてハードウェアのビジネスが拡大する。

 しかし、そのようなプラットフォームをスタートアップに押さえられてしまえば、トヨタはハードウェアをそのプラットフォームに提供する、競合する他社と横並びのベンダーの一つになってしまう。


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