2024年7月14日(日)

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2011年3月28日

岡本太郎展入り口。真二つにされた太郎が強烈な印象を与える。

 「プロローグ:ノン!」の入り口が凄い。太郎の写真が真二つにされている。「これは太郎が引き裂かれているイメージと、太郎の脳の中へ入っていくイメージが重なっています」と大谷氏は語る。通常の近代美術館の展示では在り得ない真赤な壁面と展示台に太郎の彫刻群が展示され、暗い照明は彫刻の影を長く創り出している。「太郎の可愛いは良く見るとそれだけでは済まされません。怖い一面も浮かび上がってきます」。大谷氏の見解は鋭い。ここにある彫刻群は現代的でなく、古代の仏像や土偶でもない。もっと原始的な形に満ち満ちているのだ。この長い影にこそ、戦後急速に発展した日本社会が持つ闇が蠢いているのではないかと勝手に想像してしまう。

 ピカソとの対決の章は色彩が映えるようにホワイトキューブで、写真が並ぶ「わび・さび」との対決の章では縄文土器が闇に浮かび上がるさまを強調した黒い壁面、途中、巨大な映像も投影されるなど、作品の良さを引き出す展示となっている。「太郎」との対決の部屋は圧巻だ。大谷氏がポイントを教えてくれた。「2004年に美術詳論家の椹木野衣(さわらぎ・のい)さんが太郎記念館で同じような展示を行いました。その際は絵画を全部カード化してばら撒いて拾った順に展示しましたが、今回はしっかりと研究して、描き続ける総体が一つの作品となるように工夫しました。作品を見る者が見ているようで、見世物的な太郎の作品に見る者が見られる。目玉に囲まれた中で考えて欲しい、体全体で受け止めて欲しいのです」。

「目玉」に囲まれる、「岡本太郎との対決」の部屋

 「芸術なんて、愛好したり、いい気分で鑑賞したりするものだとは、私は思わない。作家と鑑賞者の果たしあいであり、作品は、猛烈に問題をぶつけあう、いわば決闘場なのだ」。太郎について特筆すべきは、このような人々の心につきささる数々の名言であろう。エピローグ:受け継がれる太郎の精神」では、そうした彼の言葉が並べられている。この言葉は既に多くの出版物にもなっている。「没後の再評価でポジティブな面が強調されていますが、後年、タレントのようになり、美術家として忘れ去られた存在になっていたネガティブな面もあるのです。今回の展示でそういった違う太郎像が形成されることを願っています。出口ではおみくじを15万枚用意しました。受身ではなく、開いてムカつくくらいがいいのです。それを持って会場を出ても展覧会が続くように」。

 太郎のポジティブとネガティブを知ること。私たちは、ここで初めて「岡本太郎」と会うことができるのかも知れない。

生誕100年 岡本太郎展
2011年3月8日(火)~5月8日(日)
開館時間:午前10時から午後4時(入館は3時30分まで)
休館日:月曜日(3月28日、4月4日、5月2日は開館)
観覧料金:1300円(一般)、900円(大学生)、400円(高校生)
交通:東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分
お問合せ:ハローダイヤル 03-5777-8600
展覧会ホームページ:http://taroten100.com/
東京国立近代美術館ホームページ:http://www.momat.go.jp/Honkan/honkan.html
[ お知らせ ]
今後の状況により、開館日、開館時間の変更の可能性もあるため、
来館の際には、必ず東京国立近代美術館ホームページ(http://www.momat.go.jp/
またはハローダイヤル03-5777-8600でご確認ください。

 
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