畑に案内してもらう途中、軽トラに乗った近所の農家のおじさんとすれ違うと「お、取材かい?」と声をかけられる。最初は「変わった若者が藍を作っている」とけむたがられたが、今ではすっかりご近所づきあいの仲だ。
BUAISOUのトレードマークの3頭の象が描かれた藍染の暖簾をくぐって、牛舎だった手作りのスタジオを見学させてもらう。土間に埋め込んだバスタブのようなステンレス製の槽には天然藍の染料が入っていて、そこに糸の束を漬けると一瞬で鮮やなジャパンブルーに染まる。そうやって染めたシャツが何枚も干してある。
「同じ藍色でも槽によって色も色落ちも毎回違うんです。僕たちにもどう染まるかわからないのが天然の藍染の面白いところです」
真っ青な手で黙々と染め作業をこなす仲間たちを見ながら、嬉しそうに話す楮さん。
奥にあるアパレル部門の作業場では、デザイナーの三浦さんがミシンでシャツを縫ったりデザイン画を描いたりしている。
「僕たちが作るモノはどうしても値段が高くなりますが、それは畑での藍作りから始まり、こうして一点一点、手間と時間をかけた手作業だからなんです」と三浦さん。
この天然藍で染めたシャツは、まさに「ファームからクローゼットへ」なのである。
ちなみにBUAISOUの名の由来は、けっして彼らが無愛想だからではありません。「いつかは自分たちでジーンズを作りたい」という願いを込めて、日本人で最初にジーンズを穿(は)いたといわれている白洲次郎の邸宅「武相荘」から名付けたのだ。
徳島の天然藍で染めたジャパンブルーのBUAISOUのジーンズができるのも、そう遠い夢ではなさそうだ。発売されたら絶対に買おうっと!
(写真・阿部吉泰)
●BUAISOU
<所在地>徳島県板野郡上板町高瀬355-1
☎050-3741-0041
<URL>http://www.buaisou-i.com/
※BUAISOUでは、基本、見学を受け付けておりません。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。