ここは日本のノーサンプトン
ロンドンから北へ1時間ほどクルマで行くとノーサンプトンという町がある。特にこれといった観光スポットもない地方都市だが、英国を代表する高級紳士靴メーカーの工場が一堂に会していて、靴好きの間では英国靴の聖地として知られている。
そんな靴好きたちから、「日本のノーサンプトン」と呼ばれている靴のメーカーが山形県南陽市にある。「宮城興業」という会社だ。英国の田園風景を思わせる田畑が広がるのどかな地で、ノーサンプトン譲りのグッドイヤーウェルト製法*により作られる本格カスタムシューズ。これが英国靴にうるさい靴好きをも唸らせる品質と履き心地で、いつしかそうえられるようになったのである。
*米国のチャールズ・グッドイヤー・ジュニアが機械化して確立した製法。ウェルトは細革の意。靴の完成までに手間がかかるが、頑丈で長時間歩いても疲れにくい特徴がある
実は何をかくそう筆者も相当な靴好きでして、下駄箱に収まりきれないほど所有していて、家内から「私の靴がしまえない」と怒られる始末。でも反省なんてどこ吹く風。さっそく日本のノーサンプトンを訪ねて、今回は山形を旅して来たのであります。
山形県南陽市には、赤湯温泉もあり、さくらんぼにぶどう、山形牛に米沢牛、米処に酒処、最近は町おこしでラーメンも有名で市役所にはなんとラーメン課まである。ぶどう畑やさくらんぼ畑を越えて、あたり一面に黄金色した稲穂の海が広がる田園風景の中をクルマで走って行くと、宮城興業の社屋が見えてきた。