ところが、これに関して下関の魚市場関係者は、「全国でここだけが高度衛生化の漁港整備をするなら別だが、各地で同様に整備するので特異性がなくなり、漁価の向上には繋がらない。そもそも、店頭に並ぶ魚が高度衛生化された市場を通したものかどうかを消費者がどれくらい気にするのか。(他の漁港でも)高度衛生化によって魚価が高くなったという話は聞いたことがないし、その実感もない」と、水産庁の評価に対し驚愕(きょうがく)する。
こうして不可解な費用対効果分析に基づき多額の水産予算が投入される中、水産土木関係の業界団体の多くが水産庁OBの受け皿になっているという現実がある。例えば全国漁港漁場協会、全日本漁港建設協会、漁港漁場漁村総合研究所、水産土木建設技術センター、全国漁港漁場新技術研究会、全国漁港・漁村振興漁業協同組合連合会など、これら業界団体の全てに歴代の水産庁漁港漁場整備部長が在籍している。なかには、これら業界団体役員を退職後、現在でも漁港建設コンサルの社長や消波ブロック製造会社の社外取締役に就任した者もいる。ある元漁港漁場整備部長は、関係者の強い繋がりを「漁港一家」と評し、これを「肝に銘じる」と述べているが、言い得て妙と思われる。
業界団体には、当然漁港整備の予算が流れている。例えば4人の水産庁OBが再就職している漁港漁場漁村総合研究所は31億円の予算がついている16年度のプロジェクトで、「直轄漁場整備事業」で9600万円、「水産基盤整備調査」で1億8300万円の予算を受け取っている。
資源が激減する中、その効果に疑問符がつく漁港整備事業に水産予算の大部分を投入することは合理的なのか。予算を投入すべきは、資源を増やし、持続的に管理するための前提である資源管理対策ではないのか。わが国の漁業を再生し漁村地域の創生を図り、持続可能な漁業を築く。そのために、水産予算の検証と大胆な再配分が今まさに必要とされているように思われる。
PART 2.無用の長物と化す「豪華漁港」に予算を費やす水産行政
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