2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月18日

 モディ首相は、演説の最後の方で、「我々は、民主主義的でルールに基づいた国際秩序を促進させる。」と述べ、大小かかわらず各国が平等に扱われ、主権が尊重されるべきことを主張した。

 IISSの筆頭理事、ジョン・チップマン事務局長によると、今回のシャングリラ会議には、575名の参加者、40か国の国防大臣の参加があり、今までで最大規模だったそうだ。IISSが1958年に設立されて今年で丁度60周年を迎える。その記念の年であると言うのみならず、場所がシンガポールというのも重要である。朝鮮半島の地政学を大きく揺さぶる6月12日の米朝首脳会談がシンガポールで開催させる直前のアジア戦略サミットだった。

 また、チップマン事務局長が指摘したように、アジア全体が地政学的にインド太平洋という大きな戦略的舞台になってきたという重要な局面でのシャングリラ会議だった。この基調講演者として、13億人の民を抱える世界最大の民主主義国のインドの首相が招かれ、開幕したということは、大きな意義があろう。

 モディ首相も含め、誰も表立って名指しこそしないが、インド太平洋地域における中国の一方的力の誇示を暗に批判して、それに対抗するには、法に基づいた国際秩序を、価値を共にするパートナー諸国で協力して打ち立て行動しなければならない、と語りかけた。このような内容は、インドの首相のみならず、日米豪等の首脳からも、よく語られることがある。

 20年程前に、駐日シンガポール大使が、自民党外交調査会で、中国の台頭に対処するには、日本とASEANだけでは難しく、米国が入ってくれなければ対処できない、と語ったことがある。それから中国はさらに巨大化した。もはやインドも仲間に入れて、一緒に対処しなければならなくなったのかもしれない。

参考:’Prime Minister’s Keynote Address at Shangri La Dialogue (June 01, 2018’, Ministry of External Affairs, Government of India, June 01, 2018)

  
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