2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2011年4月26日

頼りにされたいロシア

 だが、ロシアは日本が外国に頼ることを恥じていると批判していたにもかかわらず、4月4日に、日本側がロシアに福島原発の放射性汚染水の処理について支援を要請したことには満足しているようだ。日本は、原子力潜水艦の解体時に液体放射性廃棄物の処理を行う船型の施設「すずらん」に期待を寄せている。「すずらん」は、そもそもロシアが原子力潜水艦を不用意に解体し、日本海を汚染することを阻止するために、日本側が出資して2001年に完成したものであり、ロシア側も「借りを返すとき」という姿勢だ。「すずらん」は長さ65メートル、幅23.4メートルで、汚染水を1日20トン処理する能力を持ち、電気供給なしで30日間、海上で稼働できる(自力航行は不能)。

 また、ロシアは汚染物質の調査、管理などでも協力できるとしてきたが、それが具体化しつつある。4月15日に、プーチン首相はロシア地理学会の理事会会合に出席し、日本の福島原発の被害状況を評価するために、ロシアの専門家が3~4カ月かけて日本に近い千島列島とカムチャツカ半島付近で大気と海面おける汚染状況を確認するほか、環境モニタリングや地震プロセスの研究を行うための視察団を派遣することを明らかにした。今年中に、その派遣のために、同学会に、特別予算を措置することも発表されたのである。

 ただし、ロシア側の論調にいちいち反応することも危険である。チェルノブイリ原発事故に携わったロシアの原発の第一人者の間でも、見解が異なることも多いのだ。たとえば、ある専門家は、チェルノブイリで行ったように、福島原発を放射能漏えい防止のためのコンクリート製の石棺で覆う必要があるという(ただし、熱が高いうちは不可能)。だが、別の専門家は福島第一原発に石棺は必要ではなく、必要なのは東電から独立した(つまり、経済効率に影響されない)技術者の特別チームだと主張したりしている。このように、ロシアの論調とて一枚岩ではない。

信念を持って

 日本としては、これからはなるべく早く、原発に関する正確な情報をすべてロシアや世界に開示し、積極的にアドバイスや支援を依頼してむしろロシアを原発対策に巻きこんでいくことが望ましいと思われる。そのほうが、ロシア側の対日不信感をぬぐえるだけでなく、ロシアの大国意識を満足させることもでき、さらにロシアのチェルノブイリ等で培った知恵、技術を日本への対策に役立てられ、極めて有益なのではないかと思われる。

 他方で、既述のように、ロシアの主張がすべて正しいわけではない。一番重要なのは、日本が自らのチームを信じて、助言には耳を傾けても、筋を通してその時々で最善の対策を貫くことだろう。


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