世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年7月5日

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 米中関係が長期的摩擦に向かっているという見通しは、その通りであろう。ミンシン・ペイが挙げている3つのシナリオは、第一は軍拡競争や代理戦争も含む深刻な対立、第二は抑制・管理された対立、第三はトランプというファクターを考えた現実に即した分析である。ミンシン・ペイは、米中関係は本来は第二のシナリオに沿って進むものと見ているようであるが、戦略的ビジョンも外交的素養も持ち合わせないトランプという攪乱要因のせいで、対立の抑制・管理が難しくなるとしている。

 トランプという特異な要因が存在しなかったとしても、米中関係の長期的緊張化は不可避と思われる。ミンシン・ペイが言う第一のシナリオに近い厳しい対立も、必ずしも非現実的とは言えない。中国の近年の行動は、長年にわたる米国の対中関与政策が有効ではなかったことを示すもので満ち溢れている。中国は、依然として大規模な軍の強化・近代化を進め、2049年までには世界最高レベルの軍隊にすることを目標にしている。南シナ海問題では、国際仲裁裁判所による自国に不利な判決を「紙屑」と言い、軍事拠点化を急速に進めている。台湾については、武力による併合も辞さない構えを強めている。一帯一路計画は、地域を政治的・経済的に中国の影響下に置く目的であると見られる。また「中国製造2025」を掲げるなどして、他国の技術の強制移転や知的財産権の侵害も辞さないようなやり方で経済成長を図ろうとしている。中国の行動からは、中国側に米中間の緊張を抑制・管理する意思があるのか疑問を拭えない。緊張の抑制・管理は、双方の意思があって初めて成立するものである。

 現在の米中経済摩擦の背景に米国の対中戦略があるというのは、確かに、そうした側面もあろう。しかし、米国が中国経済の脅威に何らかの対応するのは当然である一方、現在のトランプ政権のやり方が賢明であるかどうかは別問題である。ルールからあまりに逸脱した中国の知的財産権侵害等に対して、西側が協力して例外的に報復的措置を執るのであればまだしも、トランプ政権のようなルールそのものを破壊する、しかも西側の同盟国の貿易黒字までもターゲットにするような関税を持ち出すようなことは、かえって中国を利することにもなりかねない。
 

  
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