日本の新常識

2011年5月20日

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 2004(平成16)年に行われた国立大学の独立行政法人化は、大学のマネジメント権限を文科省から大学側に譲り渡し、名目上は大学側に経営を植えつけようというものでしたが、実質的な効果は上がっていません。なぜなら、大学側はこれまで経営などしたこともなく、経営をできるような人材がいないからです。今でも、学者である先生が55歳や60歳といった年齢になってから、学部長を持ち回りでやっているのが現実です。はっきり言ってしまえば経営に関しては素人で、定年が近いためリスクを取るようなこともしません。

 今回の東電なんかを見ていると、民間企業でも一緒だなと感じてしまいますが、要は誰もリスクを取らない、意思決定をしない。それが大学ではさらに顕著なわけです。そこで、本当の意味での経営というものを大学に植えつけるには、産学連携から入って実績を上げていくのが一番手っ取り早い手段ではないか、と私は考えています。

「産学連携」を大学変革のトリガーに

──産学連携というと聞こえは良いようですが、実態として表面的に終わっているものも多いと聞きます。

橋本氏:仰るとおりです。そもそも産学連携にも文科省や経産省からの補助金がつきますから、大学側もやること自体には賛成ですが、「体裁だけ整えればよい」というのが本音です。

 ただ、そこで私がいま仕掛けているのは、本当の意味での産学連携です。何が本当かというと説明が難しいのですが、要は事業の根幹を成すのは人間だということです。コンセプトや高い理想があって、そこに向かって忠誠を誓えるメンバーを集めてくれば、事業の方向性は自ずと見えてきます。金や地位や名誉のためではなく、目標に共感してコミュニケーションがきっちり取れる有能な人材を集めてくる。さらに言えば、大学というクローズドな世界の中にあっても、専門分野以外で高い能力を有する先生がいます。そういう先生は産学連携のようなオープンマインドが求められる場に適合するので、同じように志の高い企業の方とつなぐことで、本当の意味での産学連携が成立すると思っています。

 先ほど、「大学に経営を植えつけるための産学連携」と言いましたが、これはやる気と実力の備わった30代や40代の若手の先生を、今のうちから産学連携でフォローアップしていくことによって、大学に実績を持ち帰ってもらい、学内での発言力を高めてもらうのが狙いです。

 また、一部の国立大学の中には、今の状況に危機感を抱いてアクションを起こし始めているところがあります。たとえば、京都大学や大阪大学では、文科省や経産省に、現役の優秀な若手教授を出向させて、人事交流と、政策へのリンクをはじめています。こうした先生方は、省庁の政策と大学側の政策をうまくリンクさせて、実のある産学連携につなげる動きをされていますから、今後に期待していいと思います。

橋本昌隆(はしもと・まさたか)
株式会社フューチャーラボラトリ代表取締役。47歳。関西学院大学文学部卒業後、技術系人材派遣会社を経て産学連携、ビジネスプロデュースを行う専門コンサルティング会社を創業。事業企画に関するソリューション事業だけでなく、研究人材に関するキャリア支援など、多岐にわたり幅広く活動。

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