2023年1月27日(金)

家電口論

2018年8月11日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

1961年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了。大手メーカーにて商品開発・企画を担当後、独立。現在、商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。

クルマと環境の共存

 BMWがi3に込めた想いの一つに、サスティナビリティがあります。例えば、CFRP。炭素繊維を加工して作るわけですが、膨大な電気を使います。今回、その加工はアメリカで行われているのですが、その電気は全部水力発電で賄われています。米SGLと共同事業でもあります。また組み立てを行うドイツのライプツィヒ工場のエネルギーは4基の風力発電装置で賄われています。生産工程すら、地球を意識しているわけです。

 当然材料も、できる限り、天然品とリサイクル品を使っている。助手席にすわった感じは、工業製品の中にいるのではなく、居心地のよい簡素な茶室の雰囲気です。

助手席から見たフロントパネル。ボードはプラスチック樹脂ではなく、ケナフ麻の繊維を使用。木材はユーカリで塗料も極力使用しないなど、環境配慮が徹底している

BMWが見せた未来

 私は、『メーカーは製品以外で話をすることはできない』と考えています。事業失敗には、いろいろなパターンがありますが、回復するには「孝行息子」と称される商品を世に出す必要があります。

 では、BMWが出したi3はどうでしょうか? i3はEVの一つの形を提示したように思います。BMWは、i3を通じて「クルマは運転が楽しいモノ」と、主張していると思います。EV化は経済的、環境的な配慮による流れです。もしクルマの運転が楽しくなければ、ちょっと便利な移動手段というだけになってしまいます。個人的に買わなくなると思います。

 BMWはクルマメーカーとして、「そうではない。EVの運転は楽しい」というクルマを作り上げたわけです。インプレッションでも書きましたが、普通の速度だと、ガソリン車より面白いですし、扱いやすいです。お金を出しても買う価値ありというクルマを出した訳です。

 今、ガソリン車で運転が楽しいとなるとスポーツカー然としたものが出てきます。しかし、燃費に方向性を向けた今のクルマの多くは、あまり運転が面白くありません。i3はスポーツカーではありません。実用車です。それは最高時速150kmに制御してあることでも分かります。けれど運転がすごく楽しい。

 近年、BMWは、アメリカ、中国、パキスタンに工場を建てました。今までより、多くの台数を販売していくためだと思います。運転の楽しいi3は、それを支える可能性を秘めています。

最大の課題、バッテリーは万全か?

 EVの大きな課題にバッテリーがあります。いろいろなメーカーが鋭意、頑張っている分野ですが、今しばらくはリチウムイオン電池が主流を占めそうです。リチウムイオン電池は、温度環境により状況が変化します。このため、BMWは床のバッテリー設置部は仕切り、独立したエアコンで、常にいい温度にします。これによりバッテリーを常にベストコンディションに保つわけです。BMWのバッテリーは8年保証です。

 が、バッテリーとしての課題がなくなったわけではありません。例えば、バッテリーの重さが半分だったら、特殊なフレームにする必要もありませんし、タイヤも特注品を履かずに済んだかもしれません。寿命、性能等も、理想とは言い切れません。良いところが目立つ、i3ですが、EVの課題はまだまだ多いのも事実です。

  
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