2023年2月8日(水)

家電口論

2018年8月11日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

1961年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了。大手メーカーにて商品開発・企画を担当後、独立。現在、商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。

走行インプレッション

 今回の目的地は夏と言うことで「尾瀬」。「夏が来れば」と唱歌にも歌われた高原です。BMW GROUP Tokyo Bayがあるお台場から、首都高、関越道を通り沼田インターで降り、後は下の道を通ることになる、片道約200kmのドライブです。

 動き出して直ぐ感じるのは、バランスの取れた、ほどよい乗り心地です。道路状況を腰で感じることができるので、非常に扱いやすい。視野も大きめで、これも安心。そして良いなと思ったのは「加速」の良さ。これはモーターが回転数によらず、常にかなりトルクが出ているためです。ギュっと路面を掴んだ感じで、安心してアクセルを踏むことができます。

 エンジンには、美味しい回転数というのがあり、その回転域に合わせ込むことにより、自在な加速などを楽しめますが、i3はそれとは全く違います。どの速度でもほぼ思った通りの加速をします。これは人間⇒クルマ⇒加速という今までの乗り方が、人間⇒加速になったような感じで、自由自在にクルマを動かせる感じです。実に快感です。自分が上手くなった様に思います。

 当然、クルマの運転に自信がない人にも福音です。例えば、沼田には日本一の河岸段丘があり、そこはかなりの急勾配。途中の信号などで止まろうものなら、極端な坂道発進。オートマでも、アクセルを踏み込まないと前へ出て行かない。モタつくところです。ところがi3は全く不安定な感じがなく、アクセルを踏んだ瞬間にスッと前へ出ます。クルマ好きは元より、女性、お年寄りにすごく優しいと思いましたね。

 それだけではありません。細いタイヤですが、走る、曲がる、止まるという基本がよくできています。コーナーでの安定性の高さは、細いタイヤからは想像出来ないほどです。これは一番重いバッテリーを一番下にするなど、レイアウト設計が上手いこともありますが、いい性能です。

 単純に言うと、i3はクルマとしてのできが良いのです。さて、今回の試乗会では、ルールとして急速充電を入れ込んでみました。充電時間は最大30分と決まっていますので、ガソリンのように数分で満タンというわけには行きません。主には、お茶、食事する時間に充てました。逆な言い方をすると、休みなく長距離走ることができないEVは、ある意味、安全運転にもってこいとなるかもしれません。

急速充電設備の目印となる看板
急速充電設備

 充電時にもう一つ感じたのは安いことです。i3を満タン充電するには、自宅等での普通充電時の電気代は約650円だそうです。(急速充電設備は、450円/30分)これで350〜400km。ハイブリッド車の燃費を30kmとすると、同じ航続距離で、だいたい12〜13L必要です。要するに、ガソリンが55円くらいでないと、比較にならないのです。これは電気を作る時の効率に比べ、エンジンのエネルギー効率が悪いためです。

 「でも急速充電設備は、高速のサービスエリアとかだけでしょ。群馬の山間の村では困るでしょう」という方もいらっしゃると思いますが、尾瀬の入り口である片品村でも見つけました。道の駅「尾瀬かたしな」です。「下の道のサービスエリア」と言われる道の駅にあるのは当然と言えます。考えてみると、電気のインフラは日本を覆っているわけで、その気になれば、どこでも急速充電器を置けるわけです。しかもガソリンのように、危険物指定されていませんから、設置もし易い。実際、駐車中に充電できるサービスをする駐車場も増えているそうで、EV化がどんどん進んでいます。

 i3の良さは、それだけに留まりません。搭載されたアクティブ・クルーズ・コントロールの出来がすこぶる良いのです。これはドライバーが任意に設定した速度をベースに、先行車との距離を維持しながら自動で加減速を行うシステムですが、「ゴー、ストップ機能」が付いています。渋滞でも、先行車に付かず離れず勝手に動いてくれるわけです。必ずと言っていいほど、どこかが渋滞している首都高には持ってこい。楽しくない運転は、クルマの方で引き受けてくれるわけです。

 今回のロングドライブは、長距離移動の疲れが全くと言っていいほど、出ませんでした。残ったのは、ガソリン車より自在に運転できる、癖になりそうな自在感。「EVって痛快」という体験はとても新鮮でした。


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