2024年12月22日(日)

家電口論

2018年7月9日

 東映、VAIO、クラフターによるVRCC事業概要、コンテンツ発表会があった。VRCCとはVR Cinematic Consortiumのことで、平たく言うと、ヴァーチャル リアリティ映画のことだ。VR映像はVRゴーグルで観るが、映画館に観客を集めて、VRゴーグルを付けてもらいVRシネマを観てもらおうというモノ。1スクリーンではなく、人数分のVRゴーグルを用意、個人で観ることに違和感を覚える人もいうと思う。

 東映=興行、VAIO=ハードウェア、クラフター=コンテンツ作成と役者は揃っているが、その現状はどうなのだろうか?

新しい映像体験は映画館から

VRシネマの上映中の風景。かなり怪しいとも言える。

 映画は、常に新しい映像体験を提供してきた。「動く絵」からしてそうだ。初めての映画を観た人はビックリしたことと思う。それからすぐできた映画が「月世界旅行」。特撮映画である。今となっては微笑ましいレベルだが、ここに映画の本質を見ることができる。それは、映画の惹句で使い古された表現だが「見たことのない映像体験」だ。

 以降、映画は、いろいろな技術を尽くし、新しい映像体験を提供していく。ルーカスの「スターウォーズ」などは典型例。冒頭の戦艦スターデストロイヤーの大きさの見せ方。これだけで、皆、驚いたはずだ。日本でも「特撮」ではなく「SFX」という言葉が流行した。

 しかし技術を駆使すると、映画制作に膨大なお金がかかる。リアルなセットでのリアリティを追求した黒澤明監督が映画を作る時、国内の映画会社からお金がかかり過ぎるとして、資金を出してもらえなかったのは有名な話だ。

 1993年、「ジュラシック・パーク」で本格導入されたCGは、作れば作るほど、データーが蓄積、応用を効かせることができるので、最終的に安くできるといわれたものであるが、現時点では、予算縮小への貢献は聞かれない。

 そのため、DVD、キャラクターグッズの売り上げで、制作費を賄うようになったのが2000年前後の動きだ。興行収入は、作品全体の10%位にまで落ち込んでいた時期だ。映画館に活気がなくなった上に、スクリーン盗撮により、海賊版が横行し始めた時期でもある。

 また、この時期にデジタル化問題が発生。デジタル設備導入が必要なため、いわゆる昭和の古き良き映画館が、閉館を余儀なくされた。

 そして2000年になり「3D」が本格導入される。「3D」は新しい映像体験であり、観客を映画館に呼び戻した。その上、スクリーン盗撮しても、キチンとした映像にならないため、海賊版への抑止効果にもなっている。この頃から、シネコンが基本になる。

 そして、現在。視覚、聴覚だけでなく、臭覚、触覚を刺激する装置を入れた「4D」、映画への没入感を最大にしてくれる「IMAX」などが導入されている。

 それと共に、コンテンツ・レベルの向上も求められる。昔は、巨大セット、長期ロケーションでお金がかかったが、今はCG技術と、作成費でお金がかかる。このため、ヒットが見込まれる映画ばかりが作られるようになる。逆に言うと、似た映像が並ぶため、慣れちゃうと刺激が少ない。このため、今、映画館では、音楽ライブ、歌舞伎、オペラ、バレエなど、多彩な映像も公開されるようになった。

 一方、YouTubeなどの台頭で、ユーザーの驚愕映像体験は上がっているのが、現状だ。

 映画の歴史は、新しい驚きの映像体験と、それを実現する技術の歴史でもある。そんな中、新しい映像体験としてVRに注目が集まっている。


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