2024年4月25日(木)

From LA

2018年8月8日

全米ライフル協会も敵視

 販売の解禁は今年8月1日が予定されていた。しかしその直前、シアトルの連邦裁判所が「銃の設計図を販売すること」に対し禁止命令を出した。自宅で趣味として作る分には憲法上の自由が適用されても、それをビジネスに結びつけるのは違法、という判断だ。

 これについては今後も裁判所での闘争が予想され、ウィルソン氏は自身のウェブサイトで「銃を持つ権利、制作する自由を守るための法廷闘争に寄付を」と呼びかけている。販売が禁止されたとしても銃の設計図を「個人の意思で」ウェブ上に公開する動きは広がっており、政府としても規制をかけるのは非常に困難だ。

 しかし興味深い現象もある。銃規制を推進する団体だけではなく、ウィルソン氏の動きはNRA(全米ライフル協会)からも敵視されている。NRAの大きな資金源は言うまでもなく銃製造会社である。ネット上から設計図をダウンロードして誰でも自宅で銃を3Dプリントできる時代が来れば、銃製造会社にとっては大きな痛手となる。そしてNRAから巨額の政治資金を受け取る共和党政府も例外ではない。トランプ大統領は自身のツイッターで「公共に販売される3Dのプラスチック製銃を見た。NRAとも話をしたが、全く意味を持たないものだ」と発言している。

 公共への発売開始寸前で辛くも延期となった銃の3Dプリント用設計図販売。カリフォルニア州では現在銃犯罪抑制のため、「全ての銃弾にシリアルナンバーを刻み、発砲された実弾が誰が購入したものかわかるようにする」という法案を検討中だ。この法案が通れば3Dプリントの銃であっても銃弾は別途購入することになるため犯罪抑制に繋がるのかもしれないが、ウィルソン氏はカリフォルニア州も相手取って訴訟を起こしている。ネット上で密かに作られた3Dプリント銃が犯罪に使用される日が来るかもしれない。米国の銃規制は進むどころかむしろ後退している印象が否めない。

  
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