今や住宅さえ3Dプリントで造ってしまえる時代、3Dプリント用の素材の強度は銃のような火器を製造するのに十分耐えられる、という。実際3Dプリンターで銃を作るのは決してハードルが高くない。信頼性の置けるプリンターと必要なソフトウェアさえあれば誰でも作れるのだという。
銃のボディ部分をプリントアウトするのに必要なサーモプラスティックや金属の3Dプリンター用素材は既に存在する。実際これまでにも個人レベルで自作の3Dプリント銃を作る動きはあり、個人で所有して使用する限りは合法、と判断されていた。
しかし、こうして製作される銃の多くは所謂モデルガンに近いもので、改造して実弾を発射できるものもあるが、耐久性に乏しく多くは1度限りの発射に留まっている。AR15のようなアサルトライフルも理論上は3Dプリントできるが、そのスキーム部分は複雑で素人が作るのは困難だ。
この状況の中で2013年に世界初の「実際に使用できる」3Dプリント銃を開発したのが、現在ディフェンス・ディストリビューテッド社を経営するコディ・ウイルソン、という人物。まるでおもちゃのように見える銃だが、実際に発砲する能力を備えている。「リベレーター」と名付けられたこの銃はウィルソン氏自身がツイッターなどで公表、さらにこの銃を作るための設計図をネットに流した。
これに対し政府が直ちに動き、「ネットという性質上この銃の設計図は世界中が利用することができ国防上の問題となる」という理由で同氏のウェブサイトの閉鎖、事実上の禁止命令を出した。
ウィルソン氏は政府に対し「言論、表現の自由」という憲法で保証された個人の権利を侵害するものだ、とする訴訟を展開。2015年に始まったこの訴訟は今年5月、ウィルソン氏側の勝訴に終わった。これにより50口径以下のサイズのハンドガンに対しての規制が緩まり、3Dプリント銃は一気に広がりを見せるかに見えた。
ウィルソン氏のディフェンス・ディストリビューテッド社は「ゴースト・ガンナー」なるサイトを立ち上げ、銃の製造に必要なハード、ソフトウェアの販売を行っている。ここで用いられている設計図は「80%レス」と呼ばれるもので、実物よりもひと回り小さめの銃だが、ライフルまで含まれている。設計図はフレーム部分などいくつかに分けられており、例えばM1911ハンドガンのフレームは120ドル、さらにAR15ライフルは各部品を細かく分けて販売され、同社のハードウェアを購入すれば実弾が発射できる銃が自宅で制作できる、というキットだ。ただし現時点では予約販売となっており、まだ実際の販売は行われていない。