2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2018年9月6日

ソフィア基準、これは単なる避難所施設の建築基準ではない

 熊本地震でも地震の後で体調を崩すなどして亡くなってしまった「震災関連死」が発生した。体育館など宿泊施設でないところに仮設した、一人当たりの面積が狭い環境であるため、個人の空間が保つことができず、落ち着きがなく、気持ちが休まらないなどの劣悪な環境が強いられる。災害時だから個人としての努力では解決は困難な状況だ。

 国際的には、災害時や難民などに対応する国際赤十字の基準(ソフィア基準)があり、それを基にして国が備蓄してソフィア基準が順守できる体制をとっている。同じく地震大国のイタリア地震などでは、例えば2009年4月のイタリア中部ラクイラ地震では、約6万人以上が家を失ったが、国の官庁である「市民保護局」が避難所の設営や生活支援を主導し、初動48時間以内に6人用のテント約3000張(1万8000人分)が設置、最終的にはテントは約6000張(3万6000人分)が行きわたったという。しかも、このテントは約10畳の広さで、電化されてエアコン付きである。各地にテント村が形成され、バス・トイレのコンテナも設置される。ただし、このテント村に避難したのは約2万8000人であり、それより多い約3万4000人がホテルでの避難を指示された。もちろん公費による宿泊である。

 アメリカなどでも、宿泊できる移動車両(キャンピングカー)などを大量に輸送して避難所として活用している。

 実は日本での避難所生活は、人口密度の多さと相まって、難民キャンプ以下の劣悪な状況になっているとも言われる。いつまでも体育館に段ボールではダメなのだとはっきりと認識を持ちたい。

 災害や紛争時の避難所について国際赤十字が提唱する最低基準(スフィア基準)は、貧困地域や紛争地域にも適用される最低基準である。正式な題名は「人道憲章と人道対応に関する最低基準」であり、避難者はどう扱われるべきであるかを個人の尊厳と人権保障の観点から示している。

  • 1人あたり3.5平方メートルの広さを確保すること
  • 世帯ごとに十分に覆いのある独立した生活空間を確保すること
  • 最適な快適温度、換気と保護を提供すること
  • トイレは20人に1つ以上。男女別で使えること。女性のトイレは男性の3倍以上必要

 災害大国ニッポンで、しかも経済的にも先進国の日本において、なぜ国家の事態として、この基準を基にして考えことができないか、被災地自治体へ任せ切りにせず、イタリアのように、国家で備蓄をすることにより全国各地への迅速な対応を可能としている点などは、大いに見習うべきだとと思うのだ。現在のところは、内閣府のだしている災害時の避難所におけるガイドラインでは、スフィア基準を参考に、避難者等の状況を踏まえつつということになっているにすぎない。


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