縦割り、責任がとりにくい指揮系統への対応は、民間へ
東日本大震災以降、ペットも家族であるという考え方から、置き去りにしないで終生飼育の観点からも災害時にはペットも同行避難すると環境省が基準を示した。しかしながら、その後、発災した災害では実際に同行避難してもペットがいると避難所に入れなかったり、遠慮して車中泊をしてしまい、エコノミークラス症候群を引き起こすなど新たな問題が発生した。熊本地震では災害支援に経験の深いNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県)が犬の殺処分ゼロ問題に取り組みしている「ピースワンコ・ジャパン」プロジェクトの実績を活かして、ペットと同泊できる避難テント村をつくり、貸し出した。
前述した通り、避難行動がとりにくい高齢者や障がい者などは、避難勧告や避難指示より前に出る「避難準備・高齢者等避難開始」の段階で移動開始が必要とされているが、実際にはほとんど避難されていない。また災害時に、一般避難所では避難生活が困難な、高齢者や障害者、妊婦など、災害時に援護が必要な人たち(要援護者)に配慮した避難施設として「福祉避難所」が市町村で指定されているが、実際には老人ホームや障害者療護施設が多く、そもそも収容人数を抱えている施設に追加して受け入れてもらえるのは現実的には少数でしかない。そして福祉避難所は必要に応じて開設される二次的避難所であり、最初から福祉避難所として利用することはできないため、現実的にまだまだ十分な機能を果たしているとはいいにくい。
加えて、障がい者ではないが、難病などを抱えている人々も、投薬が止まると症状がでたり、またLGBTの方にとってもプライバシーや身体的な配慮が必要な場合なども発生する。現状では患者団体などがそうした苦労した体験をもとにして備えをして、非常時には独自のネットワークで支援を行ったりしている。
こうした場合には、細かな対応マニュアルだけでは完全にカバーできないこともたびたび発生してくるため、「公助」が必要であるのに、事後対応ではうまく回らないことが多いのだ。そこで、現状での最善策は、小さな単位での自治組織系統で判断が行うことのできるNPOなどに備蓄をしてもらっておくことだ。周囲を海で囲まれている島国の特性を活かした病院船や避難船フェリーなども大いに活用されるべきだ。日本では「共助」のもつパワーを大いに認めて、公助として共助側にストックするしくみをもっともっと構築することが望まれる。
[参考情報]
スフィア基準とイタリア地震での対応
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_0501.html
日本の寄付市場「寄付白書2017」
2018年西日本豪雨レポート(山村武彦)
http://www.bo-sai.co.jp/nishinihongouu.html
ウェザーニューズ減災調査
https://weathernews.jp/s/topics/201808/300095/
ピースワンコジャパンプロジェクト
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