多発する災害によって進化する反応と対策
災害が多発する日本でも、体験を重ねることで変化が生まれ、それがまた加速していっている。例えば、日本ファンドレイジング協会(東京都)の寄付白書によれば、それまでは寄付をする人は3割台であったが、東日本大震災では国民の約7割が何らかの寄付行動を行った。
いちど跳ね上がった寄付行動は、寄付としての成功体験を生み出し、東日本大震災以降も寄付をする人は4割台で推移している。つまり新たに1割もの人々が継続して寄付をし続けてくれるようになったのだ。また、寄付の受け皿としても対応が早くなった。熊本地震、そして今年7月の西日本豪雨でもコンビニの店頭には翌日から募金箱がおかれ、ネット募金やふるさと納税をつかった災害支援の寄付が集まった。
企業からもいち早く支援物資が出されて、避難所ニーズと提供できるシーズをマッチングするしくみも機能しだした。このように東日本大震災でどのように対応したかを覚えているので、さらに進化して次の行動に素早く移りだしていった。個人も企業もNPOも共助の手が早くなってきたとも言える。
防災においても、災害そのものを防ぐことは難しい、しかし発生した際にその被害を最小限に減らす「減災」の考え方が広まり、避難場所を確認して災害時の非常用品をもって逃げるといった、単なる避難訓練から、住民同士の協力を含めた、実際の避難所運営をどのように進めるかといったシミュレーションなどに変わってきた。
アメリカでのハリケーン・カトリーナの被害対策から、それまでの事態が発生してから対策するよりも、事態を予測して、その前に何をしておくかを未来から逆算して考える「タイムライン防災」が広がりつつある。台風21号が西日本に近づくことを見越して、関西地区の百貨店等が前日から臨時休業を早々と告知、JR西日本も前日のうちに当日午後からの在来線を全面的にストップすると予告する等の事例だ。「空振りを恐れずに」先もって取り組みすることで混乱を最低限にしようと試みられている。
災害が多発することは、大変不幸なことだが、災害大国ニッポンにおいては、もともと災害が発生しやすい地帯でさらに輪をかけて極端気象が訪れ、たびたび、驚かされる事例が起こることで、落ち着いてしまうのではなく、常に即応する姿勢が生まれつつあるともいえる。言わば、炭酸水が入った瓶を揺さぶることで中身が噴出しているが、それでもこぼれるものが少なくように対処をはかってきているように思える。