日本のODA(政府開発援助)は、現在ではより戦略的になっていると思うが、かつては相手国の開発を支援し、経済を発展させることで、日本企業の進出に資し、輸出増大に貢献するという共存共栄がODAの基本的考え方であった。
これに対し、中国の開発支援は、当初から相手国に対する影響力を増大させることを目的として行われている。中国の対外貸付が最初から相手国を破産させ、中国の意思に従わせる、負債を落とし穴とする外交であるとは考えられないが、結果としてそうなっているケースが多い。
この問題に関しては、ワシントン・ポスト紙の北京支局長であったジョン・ポンフレット氏が、8月27日付の同紙で、中国の対外貸付は、相手国を支配しようとする帝国主義的手法であると述べている。その中で、ラオスとカンボジアは今や「中国の完全所有の子会社」化していると言ったエヴァンス元オーストラリア外相の言葉を引用している。これは、実は、由々しき事態である。なぜなら、ASEAN(東南アジア諸国連合)の意思決定は、原則コンセンサス方式であるからだ。ということは、ラオスとカンボジアが拒否権を持っていることを意味する。すなわち、ASEANでは、中国に不利な決定はできないことになる。
また、ポンフレットの論説では、中国は、「一帯一路」構想を持ち出し、モンテネグロ、パキスタン、スリランカ、マレーシア等の途上国に、インフラ整備を目的に、高額な貸し付けを行ない、その結果、各国が返済できないような債務を抱えるようになってしまうことが指摘された。
アフリカのジブチでは、中国は開発支援を梃子に、中国で最初の海外基地が建設された。
中国式の開発支援は、その行き過ぎが問題を起こしている。マレーシアのマハティール政権は、債務が返済できないとして、中国の大型プロジェクト2件の取り消しを決めた。これは、マハティール首相だからできたという面はあろうが、債務が返済能力を越えている例は他にも出てきている。
スリランカは、中国に対する負債が重荷となり、ハンバントタ港の運営権を99年中国に譲ることとなった。99年というと香港を思い出すように、中国はポンフレット氏の言うところの「帝国主義」の支配者となっている。
パキスタンとモンテネグロの対中負債については、IMF(国際通貨基金)は、もはや返済できないだろうと言っている。
債務の負担の他に、中国の開発プロジェクトには、質の問題もある。ケニアでは、中国が首都ナイロビと港町のモンバサを結ぶ鉄道を建設したが、建設費が通常の3倍かかったとのことである。