世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月25日

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 今回のPIFでは、フォーラム全体の開幕に際しても、議長であるワンガ大統領、PIFのテイラー事務総長が、「安全保障」という言葉を強調していた。ただ、上記のスピーチからも窺えるように、島嶼国側としては、伝統的な安全保障だけではなく、気候変動、海洋汚染、持続的発展、グローバル経済への対処など、いわゆる「人間の安全保障」的なものを求めているようである。

 実際、PIF閉幕に際して採択された首脳コミュニケに含まれる、安全保障についての「ボア宣言」においては、「安全保障の概念を拡大し、伝統的および非伝統的な、広範な安全保障上の課題に対処することを再確認する」としており、具体的な重点分野として、人間の安全保障、環境・資源の安全保障、越境犯罪、サイバーセキュリティを挙げている。同宣言は、その上で「国家安全保障が地域の安全保障に影響を与えることを認識し、各国自身の安全保障を強化することを約束する」としている。

 もちろん、上記ワンガ大統領のスピーチにある「地政学的文脈の変化」には、太平洋への中国の進出が含まれており、対中債務の罠への懸念も話題となった。総会では、トンガが対中債務免除要請を提起しようとしたが、クック諸島、サモアなどの反対により実現しなかった、と報じられている。ASEANと同様、中国をめぐる温度差は、こうした途上国のグループでは厄介な問題である。

 日本は、堀井巌外務政務官を域外国対話に総理特使として派遣し、5月の太平洋島サミットで安倍総理が述べた、自由で開かれたインド太平洋戦略に基づく地域の平和と繁栄への深いコミット、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を守るための海上保安分野の能力構築支援や海洋の連結性強化の分野で協力、などを繰り返した。また、「瀬取り」対策を含む安保理決議に基づく対北朝鮮措置の完全な履行のため、太平洋島嶼国と協力していくことも表明した。引き続き、日本と太平洋島嶼国との協力が強化されていくことが期待される。

 豪政府は、ボア宣言を受け、安全保障分野での情報提供等に関する地域組織を設立する、と発表している。豪州やニュージーランドでは、中国の同地域への進出に対する警戒感が強まっている。日本としても、島嶼国側のニュアンスを理解しつつ、豪州など価値観を同じくする国々と連携していく必要がある。

  
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