働き盛りの男性が予防接種を受けるには……
首都圏を中心に風疹が猛威を振るっている。国立感染症研究所によれば11月4日までの今年の累積患者数は1884人、昨年1年間の患者数の約20倍となっている。患者は30代~50代の男性が多く、この世代に抗体を持つ人が少ないことが報道などで知られるようになってきたが、実際ワクチン接種という行動に移す人がどれほどいるのだろうか。感染症対策に詳しい、国立国際医療研究センターの堀成美さんは、「例えば職場でワクチンが打てる環境を整え、費用も企業が負担する。それほどハードルを下げないと働き盛りの男性が予防接種を受けるというのは難しいのでは」と本音を語ってくれた。
国がどのような対策をとっているかというと、厚生労働省は風疹の免疫の有無を調べる抗体検査について、30歳以上60歳未満の男性を対象に、来年度検査費用を全額公費で負担する方針を決めた。だが、今流行の最中にあるのだから、抗体を検査するよりもすぐにワクチンを打ってしまった方が確実かつ対応として早いのではないだろうか。
「なぜ抗体検査かというと、現実的にワクチンを打つ人を選別しなければならないのでしょう。日本のワクチンは計画生産のため、急な増産は難しいのです。毎年生まれてくる赤ちゃんの数プラスアルファ分しか生産しておらず、アウトブレイクは想定していないので、これまでも同様の事態になるとワクチン不足に陥ってきました」(堀さん)。
では輸入は可能なのか? 風疹に限らず、これまでワクチン不足になっても国はなかなか輸入に踏み切ってこなかった。「病院単位で輸入したりと個人の努力で対応しているのが現状ですが、当然在庫を抱えるリスクがありますので全ての病院ができるわけではありません」と堀さんは言う。関係者はアウトブレイクの度に歯がゆい思いをしているようだ。
最も注意しなければいけないのは、これもかなり知られてきたと思うが妊娠中の女性である。妊娠初期~20週頃までに風疹に感染した場合、「先天性風疹症候群(CRS)」といって、難聴、心疾患、白内障、精神や身体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性が高まる。2012~13年の風疹流行時には、45名の赤ちゃんがCRSと診断された。