Wedge REPORT

2018年11月19日

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感染症対策は90点では不十分

 2018年の今年、なぜ再び流行してしまったのだろうか。

 「抗体がない人たちが一定数以上いる限り、アウトブレイクは繰り返されます。風疹にかかっても、一定数の人たちは症状が出なかったり、軽症だったりと、病院にも行かず仕事も休まずに済んでしまったりします。そうすると無自覚のうちに人にうつしてしまっているかもしれません」(堀さん)。

 どうしたら流行を繰り返さないようにできるのか。堀さんは「抗体を持っている人の割合を限りなく100%に近づけなければなりません」と言う。現在、風疹とはしかを予防するMRワクチンの1回目の定期接種は1歳。たとえば、毎年子どもが100万人生まれるとして、その接種率が90%だとする。一見数値としては高く見えるが、打っていない10%=10万人が5年経てば50万になる。この蓄積が一定数たまればどこかでアウトブレイクが起きてしまうというわけだ。ちなみに、2016年の東京都のMRワクチンの接種率は、1期(1歳児)が98%だが2期(就学前)になると90%に落ちてしまっている。

 中には反ワクチンと言われる意図的に接種を拒んできた人もいるだろうが、悪意なく打ち損ねた人もいるそうだ。予防接種のタイミングで子どもが風邪をひくということを繰り返しているうちに親が仕事を休めなくなって病院に連れていけなくなってしまったり、うっかり忘れてしまったり……。定期接種は、決められた期間内であれば無料だが、それを過ぎてしまうと有料になってしまう。中には打ち損ねた人を救うための救済措置(18歳までは無料、など)をとっている自治体もあるが、そういった措置がない場合、接種をためらうケースもあるだろう。もちろん子どもの命に関わることだからお金には換えられないが、実際問題として金銭的に打てない人たちがいることは想像に難くない。

 まずは日本国内の接種率を100%に近づけること。しかしそれでも、これだけ外国人旅行客が多い現代、海外からの感染症の持ち込みの可能性を絶つのは難しい。留学生を受け入れること一つとっても、日本ではまだチェック体制が機能していないという問題がある(詳細は堀さんのこちらの記事を参照:「留学生の高額治療と感染症の対策を急げ」)。

 もちろん、国としてもっと抜本的な感染症対策をとらなければいけないことは間違いない。一方で目の前の流行に対処するためには、個人レベルでもまずはできることをしていくしかない。「感染症は家族や職場を巻き込むものだから」と堀さんは言う。

 企業の取り組みも注目を集めている。ロート製薬株式会社では、全従業員にワクチン接種を無料化、バズフィードジャパンは、この夏からワクチン接種1回分の費用を全額助成し、近くのクリニックと提携して勤務時間中の接種も認めた。ヤフーは、前回の風疹流行時にワクチンを接種する費用の助成制度を設けたがその後に入社し制度を知らない社員も増えたことから、今回改めて制度の利用を呼びかけたという。福利厚生としてワクチン接種を促すというのは有効な方法と思われる。11月13日には小泉進次郎議員が経団連の幹事会で、企業トップら約350人に風疹予防を進めるよう訴えた。

 SNSなどでは抗体のない妊婦さんは自己責任では、と批判する声もあるが、ワクチンを接種しても抗体がつきづらい人は一定数いる。病気等でワクチンが接種できない人もいる。そういった人たちを守るためにも、打てる人が地道に打つしかない。感染症対策は90点では不十分なのだ。今こそ満点を目指して、守れる命を守るべきではないだろうか。

  
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