Wedge REPORT

2018年12月14日

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佐藤由利子 (さとう・ゆりこ)

東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系准教授

東京大学教養学部卒業、東京工業大学社会理工学研究科にて学術博士号取得。国際協力事業団(JICA)勤務、東京工業大学留学生センター准教授を経て、2016年から現職。

 国内の日本語学校(告示校、専門学校の日本語コースを含む)の所管は、法務省入国管理局であり、設立時に文部科学省の協力を得て告示校としての適格性を審査するが、その後は、学生の中途離脱率、不法残留率のチェックが中心で、教育の質を十分にモニターしていない。卒業時の日本語能力の確認も義務付けられていないため、無試験で進学できる先があれば、日本語能力を身につけないまま卒業するケースも出ている。また、N2以上の日本語能力を求める選別性の高い大学には、希望しても入学できない、という事態が生じている。

 日本語教育にかかる行政は、海外では外務省所管の国際交流基金が日本語教育の普及や日本語教師の養成を担当し、国内では、法務省が告示校を一義的に所管する他、日本語教育の促進や日本語教師養成を文化庁が、大学の留学生別科(大学入学前の日本語教育を実施、届出制)を文部科学省が担当し、所管省庁が細切れに分かれてしまっている。

教育の質を担保する制度設計を

 このような状態を改善するためには、日本語学校の教育機関としての位置付けを明確にし、大学のように、国が認証する評価機関によって、教育の質や実施体制を定期的に評価・点検する制度の導入が必要である。また、学生の卒業時の日本語能力など、教育成果の公表を義務付け、良い学校が評価され、悪い学校が淘汰(とうた)される仕組み作りを検討すべきである。教育の成果を競うようになれば、能力の高い日本語教師を、よりよい待遇で確保しようとする動きも加速するだろう。

 2年間の学習で日本語能力がN2レベルに達しない非漢字圏出身者が少なくない現状に鑑み、その原因が、本人の学習態度、言語習得能力、学校の教育体制のいずれにあるのかを解明するとともに、海外と国内の日本語学校が連携した形で、来日前からの日本語学習や適格者の選抜を促進する必要がある。

 先日、「改正出入国管理法」が成立し、来年4月から「特定技能」の在留資格での労働者の受け入れが始まる。新制度の下での2国間協定に基づく送り出し国として、ベトナムやミャンマーなどの名が挙がり、留学生同様、非漢字圏出身者が多数を占めると予測される。特に介護、宿泊など、高い日本語能力が求められる職種では、来日後も日本語学習の継続が必要となると見込まれ、日本語学校の役割はますます重要となる。教育の質を担保する制度設計は喫緊の課題である。

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■留学生争奪戦「金の卵」に群がる産業界と大学
PART 1  日本企業が縋る〝金の卵〟留学生
PART 2  ニッポンで働く「壁」を取り除き留学生と企業をマッチング
COLUMN 外国人を活かすも殺すも企業次第
PART 3  ”偽装留学生”はなぜ日本をめざすのか?(出井康博)
PART 4  日本語学校の教育の質の担保を(佐藤由利子)
PART 5  定員割れ大学の延命を図る留学生30万人計画(小川 洋)
INTERVIEW 留学生を〝金の卵〟とするために大学と社会に求められる覚悟
       出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

  
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◆Wedge2018年12月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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