上記議長声明は、南シナ海におけるCOCの早期発効を促すとともに、緊張を高め、平和や安全保障を損ない得る埋め立て等に懸念を表明するなど、最近のASEAN関連のこの種の会議での声明を踏襲した内容となっている。中国が参加しているにもかかわらず、南シナ海における埋め立てその他の活動への懸念を表明できている点は評価できよう。
COCについては、8月に草案が承認された(非公開)が、大きな問題が含まれている。中国が提案した、軍事活動通告のメカニズムである。域外国と合同軍事演習を実施する場合、関係国に事前通告しなければならず、反対があれば実施できない、という内容である。例えば、ASEAN加盟国が米国と合同演習をしようとしても、中国が反対すれば、実施できないことになる。中国に対して厳しい姿勢をとるベトナムなどは反発しているようである。他方、中国はASEANとの軍事演習の定例化を求めている。また、中国は、COCに法的拘束力を持たせないことを目指している。それでは「行動規範」の名に値するかどうか疑わしい。実効性のあるCOCの策定への道のりは極めて遠いと言わざるを得ない。
上記議長声明は「UNCLOSを含む国際法に従って、紛争の平和的解決を追求する」としている。しかし、中国は2016年の南シナ海についての仲裁裁判所の判決を「紙屑」と称するなど国際法を無視し、南シナ海の軍事拠点化を進めている。これに対抗するには、「航行の自由作戦」などを、着実に実行していくことが肝要である。
米国のペンス副大統領は11月16日、APECのCEOサミットでの演説で「米国は海と空の自由を支持し続ける。我々は、国際法が許す限り、我々の国益が必要とする限り、どこであれ飛行し航行し続ける。嫌がらせは、我々の決意を強固にするだけだ。我々は方針転換しない。我々は、ASEANが、航行の自由を含む全ての国の権利を尊重する、意味のある、そして、拘束力のある南シナ海のCOCを策定する努力を支持し続ける」と述べた。勇気づけられる、力強い発言である。米国以外にも、英、仏、豪が航行の自由作戦を実施している。今や、中国の南シナ海における行動は、国際社会において広範な懸念を集めている。日本としても、南シナ海で、「航行の自由作戦」を含め、何ができるのか、より強い対応を考えなければならない時期に来ているかもしれない。
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