Washington Files

2018年12月3日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 全米炭鉱労組(UMWA)のデータによると、今世紀にはいり顕著に下降線をたどり始めたアメリカの石炭生産量は2016年には1978年以来、最低を記録、この間の電力会社などによる石炭需要も1984年以来、最低にまで落ち込んだ。失業者数も過去数年で3万人にも達し、採掘労働者数は全体で約5万1000人程度となっている。

 ただ、2017年には、厳しい寒波襲来が続いたこともあって生産量は一時持ち直し、雇用も前年より8000人程度増加した。これを受けてトランプ大統領は今年1月の年頭教書の中で「石炭業界の復活」と高らかに謳いあげ、実際の数字を5倍近くも膨らませた上で「われわれは短期間のうちに4万5000人もの新たな雇用を炭鉱業界にもたらした」と豪語してみせた。

 これに対し石炭業界の専門家は「この一時的な雇用と生産量の増加は、昨年の気候状況と天然ガス価格上昇にともなう海外からの需要増によるもので、トランプ政権による環境規制緩和とはほとんど関係ない」と冷ややかな反応を示している。

 さらにトランプ政権にとって気がかりなのが、強力な組織力を持つUMWAが、2018年に入って共和党から民主党シフトの動きを見せていることだ。

 ロイター通信によると、UMWAは11月中間選挙に向けて民主党議員候補への政治献金を2016年にくらべ20%近くも増やし、その額は全体の8割近い91万ドルにも達したという。

 その理由について、同労組スポークスマンは、「全米各地で炭鉱閉鎖が続く中、残された炭鉱労働者たちにとっての最大関心事は、失業手当や退職年金に対し、どちらの政党が理解を示してくれるかという点だ。これまで共和党議会は炭鉱閉鎖にともなう救済措置に否定的だった」と説明している。

”レトロ・アメリカ”への偏重

 最後まで大接戦となった2016年大統領選では、ペンシルバニア、ウェストバージニア、オハイオ、ワイオミングなどの”炭鉱州”が、いずれもトランプ支持に回り、同大統領当選に決定的に重要なカギとなった。

 21世紀に入ってからの米国地勢マップの推移を見ると、都会のサラリーマン、近郊居住者、女性、大卒若年層、マイノリティなど有権者層の民主党支持が拡大する一方、共和党の支持基盤は農鉱業従事者、閑村白人層など過去の伝統にしがみつく”レトロ・アメリカ”への偏重が目立ちつつある。それだけに、2020年大統領選で再選を目指すトランプ氏としては今後、何としても石炭、石油などの化石燃料関連事業への肩入れを一層強化、白人保守層の支持つなぎとめに腐心せざるをなくなっている

  
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