骨の丈夫さは20歳代までで決まる
最初の懸念は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に対する懸念だ。中高年以降になると骨の主成分が減少し、骨がスカスカになって(この表現が正確かどうかは別にして)些細なことで骨折しやすくなる。骨折をすると、寝たきりになったり、それが原因で認知症になったりしやすくなるので、とりわけ寿命が長い女性にとっては「老後の人生」に多大な悪影響を及ぼす。
若い女性は「それは聞いたことがあるけど、まだ先の話でしょ」と思っているかもしれないが、そうではない! 骨の丈夫さは20歳代で決まるらしいのだ。骨量(骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質)は20歳代でピークを迎える。ピークから先は、年齢を重ねるごとに少しずつ減少し続ける。そして、骨量が一定以下(骨粗鬆症)になると、骨折しやすくなる。
これを防ぐ方法は(主として)2つ。1つは「ピーク時の骨量」をできるだけ高くしておくこと。2つめは「減少速度」をできるだけユックリすること。30代以降に、骨量をピーク時よりも高くすること(増やすこと)は、現代の医学では不可能とされている。
ピーク時の骨量を高くするためには、10代から20代にかけて、骨の原料となるカルシウムやたんぱく質を充分にとり、骨の形成に欠かせないビタミンDをも充分にとる。そして、そのビタミンDがしっかりと作用するためには太陽に当たることが必要なので、日光浴も欠かさないこと。さらには、縄跳びやジョギングなど「重力のかかる運動」をすることも必要になる。
これらのことを、20歳代までに身につけ、なおかつ実践することが重要。しかし、スタイルを気にして必要以上のダイエットの結果、「やせ」の範疇に入ってしまうような食生活は、上にあげたカルシウム・たんぱく質・ビタミンDのいずれもが不足してしまう危険性が高い。先ほども書いたようにあとから取り戻すことはほとんど不可能に近いので、そうなる前に予防=「やせ」にならないような食生活を心がけなければならない。
過度のダイエットは赤ちゃんに悪影響を与える
若い女性の「やせ」に深く関係する2つめの懸念は、次世代つまり胎児への悪影響だ。昔は「小さく産んで大きく育てる」などといわれたこともあったが、近年、さまざまな理由で「出産時の体重がきわめて少ない」未熟児の誕生が増加している。
その原因の1つとして妊娠中の母親の「やせ」があげられている。母親としては「私は太らなくてもいいから(太らないようにしてるけど)お腹の赤ちゃんにだけは栄養がちゃんといってほしい」と願うのだろうが、なかなかそううまく(?)はいかない。もし全体の栄養量が少ない場合には、基本的には、栄養成分は優先的に母親に届く。
縁起でもない話をして恐縮だが、栄養不足のために(仮に)胎児に万が一のことがあっても母親が死ぬようなことは(ほとんど)ない。しかし、その逆に、母親が死ぬようなことがあれば、胎児は(ほとんどの場合)生きながらえることはできない。なので、栄養成分は(母親の思惑とは関係なく)母体のほうに優先的に届く。つまり、妊娠期のダイエットは、胎児の未発達に容易につながってしまう。
また、「やせ」の母親から産まれた子どもは、誕生時には普通の体重であっても、成長するに従って生活習慣病になりやすい、という研究もある【※3】。母親の胎内にいるときに低栄養状態になると、「栄養成分を効果的に摂取し、積極的に蓄えようとする体質」つまり太りやすい体質になるのではないかと推察されている。
自分の極端なダイエットが子どもの将来に悪影響を与える危険性があることを考えて、妊娠中の母親は適正体重を保つことに留意したい。
【※3】https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-06-002.html