公表されている検査値を見ると、福島県でチチタケの放射性セシウムが28000Bq/kg、ハツタケが19900Bq/kg、マツタケが3300Bq/kgなど、高いものが見られます。茨城県でも、8000Bq/kgのチチタケが見つかっています。
チェルノブイリ原発事故後、キノコから高濃度の放射性物質が見つかっていることから、秋のキノコシーズンを前に厚労省は、各自治体にキノコの検査を重点的に行うように指示しました。東北や関東各県は、地元の人たちが採取する多くの種類の野生キノコの検査結果を公表しており、農水省も注意を呼びかけています。
野生だけでなく、木に菌を植え付けて育てる「原木しいたけ」の施設栽培についても、福島県や茨城県内の一部地域で出荷制限がかかっており、10月には千葉県と茨城県の一部地域で、露地栽培に出荷制限がかかりました。原木は3~4月段階で放射性物質が付着した恐れがあり、生産管理が難しいのです。また、露地栽培は山林で行われることが多く、周辺の樹木に付着した放射性セシウムが移りやすいとみられています。
一方、おがくずなどを使い施設で栽培する「菌床しいたけ」は、検査結果が比較的低く、出荷制限はかかっていません。放射性物質が付着していないおがくずなどを調達して栽培すれば、汚染は起こりにくいのです。
また、静岡県で乾しいたけを業者が自主検査したところ、暫定規制値(500Bq/kg)を超える数値が検出され、県が7日に発表しました。農産物は乾燥すると重量が約10分の1になりますので、暫定規制値超えは起きる可能性があります。そのまま食べる人はいないので、実際には健康リスクとはなりにくいのですが、県は重点的な検査を進める予定です。
<お茶>~常緑樹だったため、古い葉から新芽へ
お茶からも暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されました。これは、常緑樹であることが大きな要因とみられています。越冬した古い葉に原発事故直後、放射性物質が降下し、それが葉面から吸収されてお茶の木の中を移動、転流して新芽に集まったのではないか、というのです。
そのため、出荷制限のかかった地域の生産者は、古い葉を刈り取るなどして来年に備えています。
<果樹>~ユズ、クリが出荷制限
種類によって、濃度はさまざま
福島県の一部の地域のユズが暫定規制値を超え、8月末に出荷制限がかかりました。なぜユズなのか? はっきりしたメカニズムはまだ不明ですが、ユズも常緑樹なのでお茶と同様に、降下した放射性物質が葉から入り、木の中を転流して果実に集積した可能性があります。
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一方、同県の一部地域でクリも出荷制限がかかりました。これも、樹皮などについた放射性セシウムが吸収され転流した可能性が指摘されています。
こうしたことは当初から予想され、ブドウやモモは樹皮をはぎ取るなどの作業も行われました。そのためか、暫定規制値を超えるような数値は出ませんでした。果樹の種類や放射性物質の降下量、土壌の性質等で、放射性物質の濃度は大きく異なるため、果樹だから、と一括りにせず、それぞれに判断が必要です。