2024年4月24日(水)

食の安全 常識・非常識

2011年10月17日

<水産物>~底魚が高い数値、
福島の沿岸漁業は再開見通しつかず

 水産物は多くが検出限界未満ですが、海底にいるヒラメやカレイ、アイナメ、メバルなどで、100Bq/kgを超える高い数値が目立っています。このことは、当初から予想されていました。放射性物質がごみなどと一緒に凝集し海底に沈んだ後、底魚が海底の餌と一緒に取り込むからです。また、海の表層~中層を泳いでいるスズキ、ブリ等でも時折、高めの数値が出ています。

 消費者が水産物について考える場合のポイントは、暫定規制値(500Bq/kg)を超えたり、高めの数値が出たりしている水産物の多くは、福島県沿岸で採取されたものであること。同県の沿岸漁業は、地震によって壊滅的な被害を受けました。また原発事故で海に流れ出した放射性物質の一部はまだ拡散しておらず、沿岸には比較的高濃度の海域もあり、漁業再開の見通しは立っていません。したがって、福島県沿岸部の水産物は市中には出回っていないのです。

 しかし、検査のための採取は行われ結果が公表されています。このことが消費者や一部のマスメディアには理解されておらず、「魚が危ない」という情報につながっています。

 また、茨城と宮城県の検査数が少ないことも、不安を産んでいます。水産物は農産物と違い、希望の魚種を検査に十分に供せるほど多く穫る、ということが難しく、関係者は検査に苦労しています。また、牛肉やコメの検査を数多くこなす必要があり、水産物にまで手が回らなかった、という状況もあります。

 水産物は、農産物のように生産管理に努力して放射性物質の含有量を減らす、ということが難しい食品です。したがって、農産物よりも検査数を増やして厳しく監視すべき。ところが、逆になってしまっているのです。

 海水魚は放射性セシウムをとりこんでも排出しやすいため、一定程度まで上がった後は下がる、という意見もあります。現状では、暫定規制値を超えるような魚が市中に出回っているわけではないでしょう。しかし、検査数を増やし今後の推移をしっかりとみていく必要があります。

 一方、川や湖の淡水魚は要注意。森林に大量に降下した放射性セシウムが川や湖に流れ込んでいるとみられるうえ、海水魚と違って放射性セシウムを取り込むと排出しにくいからです。福島県以外でも暫定規制値を超えた例があり、趣味の川釣りも慎重さが必要です。

<まとめ>~要注意の食品はあるが、
汚染ゼロは望めず

 今、食品についてはすさまじい数の検査が行われています。厚労省ウェブサイトで公表されている検査結果は約2万7000検体(9月末現在)。大多数の食品はND(検出限界未満)か数値は低いが、ちらほら要注意の食品がある、というのが現状です。そのちらほらには、出荷規制がかかる仕組みがあり、生産管理の努力が続けられています。また、福島県沿岸部の水産物のようにまったく出荷しない、という措置が講じられているものもあります。

 そして、暫定規制値程度の数値の食品も、連続して食べない限りは健康へのリスクは事実上無視できる、というのが食品の現状です。


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