田部康喜のTV読本

2019年2月6日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

ドラマに主軸を置く唐沢・小泉の競演

 第3話「隠された罠」(1月27日)と第4話「過去との決別」(2月3日)のドラマの中盤にさしかかって、杏子が自立する自信を深めていることと、壮一郎が巻き込まれている贈収賄事件の輪郭が見えてきた。

 壮一郎は、後任の特捜部長・脇坂博道(吉田鋼太郎)に揺さぶりをかける。第3話のなかで杏子は、私鉄の電車運転手が死亡した事故の原因をめぐって、過重労働から会社側から運転手の妻に賠償を認めさせようとして行き詰まった。留置場に面会にきた杏子に対して、壮一郎は息子の自転車の故障の思い出を振り返った様子をみせて、電車を調べるように仕向ける。

 私鉄が車両のブレーキの定期検査を偽って、架空の経費を計上して利益をかさ上げしていた事実がわかる。実は、特捜部長の脇坂が横浜地検時代に、こうした事実の内部通報に基づいていったんは捜査を始めたものの立件しなかったこともわかる。脇坂はメディアの追及を受けて、検察内部で窮地に立つ。

 第4話に至って、壮一郎のもとに、元部下の佐々木(遠藤)から贈賄側の企業が計画倒産したうえに、取締役たちが別の企業に引き取られた事実が告げられる。取り調べ室を離れたトイレのなかで、佐々木と壮一郎が情報交換するシーンから贈収賄事件を仕掛ける何者か、という恐怖がひたひたと伝わってくる。

 杏子の上司となった、多田(小泉)と壮一郎(唐沢)が留置場の面会室で対面しながら、火花を散らすシーンが魅せる。映画よりもドラマにこだわって俳優人生を歩んできた、唐沢と同様に、ドラマに主軸をおきなながら成長を遂げている小泉だと思う。

 壮一郎は、保釈申請をしている。多田はそれを止めさせようとしてやってきた。

多田  保釈請求を取り下げてもらえませんか。あなたは、自分のために杏子さんを利用しようとしましたね。

壮一郎 私の妻は強い人間です。

多田  泣いていましたよ、私の前で。

壮一郎 あなたはいったいどんな関係なのです。

多田  上司であり、友人です。それ以上はあなた次第ですが。あなたは彼女の苦しみを取り除くつもりなどない。家庭に戻ってはいけません。

 第4話のなかで、杏子が取り組んだのは、野球部員の高校生がマンションの屋上で喫煙して、非常階段を管理人に追われて、突き落とした殺人事件容疑。この高校生の母親は、かつて住んでいた自宅の自治会で一緒だった。引っ越すと真っ先に友人となり、夫の事件がきっかけで縁を切った人物。犯行は別の野球部員で、この高校生の無罪を勝ち取った。

 母親が「またランチに誘うね」といったのに対して、杏子はこういう。

 「口だけでしょ。電話はかかってこない。世の中そういうもんだって、わかったから」

 杏子の残業を心配して、事務所に夜食を届けにきた息子に対して、杏子はいう。

 「やさしくなるには、自分が強くなければ。強くなって、強い人間となって、依頼人と息子と娘を守っていければ、それ以外はどうでもいいかな」


  
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