2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2019年2月19日

二拠点生活が続けられるかどうかは、最初の1年で見えてくる

 とはいえ、まだまだ一般的にはハードルの高そうな暮らしに見えるようだ。「どうすれば二拠点生活が続けられるのですか。コツがあれば教えてください」という質問をよく受ける。

 周囲の期待を裏切って12年以上二拠点生活を続けている身で振り返ってみると、コツなどはなく、むしろ「特にこの暮らしが終わる気がしないな」と確信できる時期があることに気付く。そして、それは意外にも早く、開始から1年を過ぎた頃と考える。春夏秋冬を暮らし、生活のリズムや家計の収支状況などもちょうど掴めてきた頃だ。当然、トラブルもいくつか経験しているだろう。

 この頃、メリットの実感が、デメリットのリアルを超えているかどうかが分水嶺となる。

 それでは具体的に、どんなメリットやデメリットがあるか、いくつか例を挙げてみたい。

【メリット】

①確実に定期的にリフレッシュする

 平日の仕事疲れを引きずる暇もなく、まったく別の場所でまったく別のことをする。これが実は、疲労回復を早める場合がある。“アクティブレスト(積極的休養)”とも言う。田舎暮らしは自然と身体を動かす機会がたくさんあるため、心身がバランスよく整う。

②消費一辺倒ではない過ごし方ができる

 「外食しよう」「買い物に行こう」と、休日らしく楽しもうとするとお金がかかる都市生活。一方、田舎では消費せずに楽しめることが見つけやすい。畑仕事、野草摘み、焚き火、自然観察、DIY、釣り、サーフィン……狩猟本能を満たしたり、スキルアップにつながったりと、暮らしを深める楽しみに満ちている。

③“本当に新鮮な食材”に感動する

 畑を始めれば採れたて野菜の桁違いな美味しさがすぐ分かる。海に近ければ新鮮な魚が日常の食卓にのる。食は命の源。ひとたびいい食材のあり方を知ると、なかなか後戻りはできない。舌鼓を打ちながら、都市部の高級スーパーの値札が脳裏をかすめることも。

④多様な人達とつながれる

 田舎の人間関係について心配されることがあるが、お隣さんの親切に感謝したり、お裾分けに感動するという話の方がよほどよく耳にする。さらに、移住者やデュアラー、漁師さんに猟師さん、そして農家さんと、都市で家と仕事場を往復している時よりも圧倒的に多様な人達とつながれるチャンスがある。

自分でつくった野菜を食べるのは、とりわけ楽しい

では次に、ネガティブチェックをしてみよう。

【デメリット】

①移動のコストや時間がかかる

 環境を変えるためには、どうしても移動時間がかかる。毎週末の移動を考えると、片道2時間以内が適切だろう。往復で4時間。ガソリン代や高速代もしっかりとかかってくる。ちなみに筆者の場合は1往復約7000円×月3回程度=21000円の交通費がかかり、1時間半の移動中は家族の好きな音楽を聞き合うことが多い。

②家賃、生活雑貨、趣味の道具や燃料などにお金がかかる

 当然だが、2つ家を持つと2ヶ所に生活必需品が必要で、借家なら家賃もかかる。古民家や農機具など時にプロのメンテナンスが必要な物もある。これらを必要経費として確保できるか。例えば、都市の住まいをコンパクトにして家賃を抑えたり、上記メリット②とのプラスマイナスを考えて、辻褄が合うか見ていくことになる。

③家族の予定を合わせるシフターが必要

 やれこどもの行事だ、やれ仕事の付き合いだと週末にも都市生活の予定は入ってくる。これらをうまく整理して、家族の中で行く週末/行かない週末、行く人/残る人、などと見通しを立てる。もっとも気苦労の多い局面とも言える。公平性や自由意思の尊重が大事であり、話し合いが必要な場面も増えるだろう。

④やることがたくさんあってのんびりしていない

 「のんびり田舎暮らし」をしているデュアラーに会ったことがない。大抵、貴重な週末2日間をフル活用して野良仕事や大工仕事に精を出し、それでも時間が足りないと言っている。なぜなら、デュアラーの田舎暮らしは“暮らすことそのものを楽しむ”ところに意味があるからだ。買えば一瞬で手に入る野菜をつくり、安く買える家具を丹精してつくり、コンクリートで固めてしまえば生えない雑草を年中刈りながら、自然を愛でる。もし便利に合理的に暮らしてしまえば、都市生活と一緒になってしまう。より濃く暮らそうとするから、手間暇がかかるのだ。


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