産油国から再エネ大国に
1972年世界の知識人の集まりであったローマクラブが、「成長の限界」を出版し世界的なベストセラーとなった。地球の保有する資源、例えば石油、の埋蔵量には限りがあること、また地球環境が受け入れ可能な廃棄物の量にも限りがあることなどから、成長には限界があると訴えた書籍だった。
出版から50年近く経った今、石油の可採年数は、まだ50年程度はありそうだ。成長の限界出版時の可採年数は40年程度だった。資源は有限なはずではなかったのかと「成長の限界」への批判もあるが、石油の可採年数が減らない理由は二つだ。一つは1973年の石油危機により、原油価格が高騰し経済的に採掘可能な埋蔵量が増えたことだ。もう一つは原油価格高騰が石油に代わるエネルギー、石炭、天然ガスへの代替消費を増やし、原油の消費量が低迷したことだ。
石油危機まで世界の原油生産、消費量は、ほぼ10年で倍増する勢いで増えていた。勢いが続いていたならば、1973年から今までの間に生産量は大きく増加した筈だが、石油危機後原油生産量の伸びはなだらかになっている。図-1の通りだ。
この間の米露サウジアラビアの3大産油国の生産数量の推移は図-2の通りだ。
サウジアラビアは最近の20年間ほぼ1位を続けていたが、今はシェール革命によりシェール・オイルの生産量が増えた米国が世界一だ。
しかし、原油消費の先行きは明るくない。世界の原油消費量の半分以上を占める輸送部門では、燃費の向上に加え電動化、燃料電池車の導入増が続くと予想されており、途上国での自動車台数増を考慮しても中期に原油消費量が増加するかは微妙だ。当然、原油生産数量も頭打ちになると予想される。産油国は今ある収入を利用し新しい輸出産業を創出する一方、高収益投資により将来の収益を確保する必要がある。サウジアラビアは太陽光発電によるエネルギー輸出維持とを公的投資基金による投資収益確保を狙っている。