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2019年2月27日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

トランプの長所を否定するのは難しい

 これらはトランプが自ら公約したり、当選後に述べたり、報道されたことで成り立っている。それぞれの項目に私なりの見解を述べてみるが、1から6までを一概に否定するのは難しいと気がついた。

 (5)のロシアとの話し合いだけは明らかに破綻したが、北朝鮮と戦うことはせずに、話合いのテーブルについているし、シリアやアフガンからも撤退したがっている。

 もし私がアメリカ人であったならば、紛争地域から手を引くことに賛成するだろう。戦いに行けば、地元の人間に嫌われ、軍を引いたら引いたで、平和を維持できないなどと非難される。うんざりだ。

 (4)のラテンアメリカの腐敗政権を根こそぎにするという公約は、メキシコ人他ラテンアメリカの人間には魅力的だが、実行はかなり難しいだろう。現在まさに腐敗政権の代表のようなベネズエラを、アメリカは石油公社(PDVSA)との取引に制裁を科すことで兵糧攻めにし、反対派の国会議長フアン・グアイドを暫定大統領に担ぎあげ、人道支援の名目でおよそ22億円を提供する用意があると表明している。

 だが、どうやってその金を送るのか。すでに、彼にかかわる口座は腐敗政府により閉じられてしまった。私自身知人に支援金を送ろうとしても、為替市場が歪んでいるので、難しい。仮想通貨? まさか。ベネズエラ政府は、ペトロなどという仮想通貨をさかんに喧伝し、一部面白がった媒体が報道したが、そのようなものに実態はない。私の知人で見たものは誰もいない。

 金額相当の援助物資としてならば、可能だろう。実際実行されつつあるが、送り先はコロンビア、ブラジルなどの国境側である。ベネズエラ内は、誰が受け取り誰に配るのか? 実施には乗り越えなければならない壁が多々ある。

 さらに石油公社からの輸入に制裁を加えるのは、4月29日以降になると期限を設けており(Forbes 2月1日 Kenneth Rapoza)、実際に輸入を止めるかどうかは、不明である。アメリカもベネズエラから日量50万バレル前後の原油を輸入している。だから、これまでは輸入を停止するという発言は、すべて仄めかしに終わっている。

 このように腐敗し混乱した反米国家に手を差し伸べるのは難しい。政権交代はひとえに現政府から甘い汁を得ている軍部の動向にかかっているのだ。アメリカができることは限られている。

 (6)のイルミナティと戦うとは、ワシントンの既存勢力であるヘドロを叩きだすという意味である。トランプが国際機関と戦っている様子はないが、国内ではこれは実行している。既存勢力の代表であろうCIAやFBIと戦っているのだ。しかも、既存の匂いがする(=トランプ自身を否定する)側近は次々に解雇する。マティス国防長官でさえ解雇したのだ。日本のマスコミや日本人はそれを否定的にとらえるが、まさにそれだからこそ、トランプは支持されるのである。  

 「You're fired(お前はクビだ)!」 はトランプの真骨頂であり、大衆が胸をスカッとさせ、喝采する最強の手段、劇場政治の最高の見せ場である。政府のポストが数多く埋まっていないのも、それだけヘドロが少ないのだから、大衆はいい意味でとらえる。

 このような手法は、日本の政治家も使った手であり、遠くない過去を振り返ることで、日本人にも理解可能だろう。

 この番組でもっとも、視聴数が高いのは、90万弱の「Discurso anti-Illuminati de Donald Trump(イルミナティと戦うというトランプの演説)」であり、既存勢力との戦いこそが大衆の心を掴む手段であることを示している。一方、私が注目した「あなたが知らないトランプの6つの長所」の視聴数は30万弱となっている。

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