戸田さんは、SNSで大成功を収めた有名人ももちろんいるし、だからこそ夢を持つ人も多いのだろうと続ける。そして、「だけれど、どうしてネットの世界ではそんなにみんな『特別』になりたがっているのだろう?」と続ける。
「フォロワーぜんぜんいなくても、友達ぜんぜんいなくても、町中でだれもあなたのことを知らなくても、いいねが一個もつかなくても、そんなことは、どうでもいい。あなた自身の価値は、あなた自身とあなたが大切にしている人たちだけの中で柔らかく、情けたっぷりに愛情加点たっぷりにくだされるべきもので、それ以外は、べつにどうと思わなくていい。あなた自身の評価は、人生が終わった後にやっともらうくらいで丁度いい」(「SNSで死なないで」より)
乾いた中年の心に染み渡る、清廉なひとしずくのごとき文章だ。これがヒッチハイク中学生にも響けばいいが、このような文章の価値に気づくのは、自分が子どもとして愛され保護されていた時期があることを振り返れるようになってからなのかもしれないとも思う。
ZOZO田端氏「おーい、ブスども聞いてるか?」
数字で可視化されることの意味は現代人にとって刺激が強い。フォロワーの数をいったん気にし始めたら、その指標から逃れることはなかなか難しい。
ヒッチハイク中学生騒動の少しあとに、「美人は辛いよ」炎上があった。これは、元外資系金融社員の女性が全身写真とともに「美人は辛いよ」などとツイートしたもの。彼女のツイートは何気ないものだったが、これをZOZOのコミュニケーションデザイン室長・田端信太郎氏(フォロワー数約19万8000人)が引用し「おーい、ブスども聞いてるか? 美人の告白ポエムだぞ!」と煽りツイートしたことで炎上。
今年からスタートしたばかりの女性のアカウントのフォロワー数は急増したが、炎上後にアカウント自体が削除されてしまった。実は、田端氏のツイートはもともと計算されたもの。女性が現在役員を務めるPR会社社長の過去ツイートから、女性を「インフルエンサーとして育てる会議」が行われ、田端氏がメンターに就任していたことが明らかになっている。この社長のツイートは「働く強い女のリアルを呟き続けるよ。乞うご期待!!年内に3万フォロワー目指します!!」といたって無邪気だ。
大人でさえ、こうやって数を数えることに夢中になる。子どもにこの遊びに気づくなと言う方が難しいだろう。「SNSで死なないで」の文章は、自分の価値を人の指標に委ねるのはとびきりダサいことだと教えてくれるのだが、目の前にあるバブルしか見えていない大人たちは、まだ踊ることをやめられないでいる。バブルはいつ弾けるだろうか。
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