2024年11月22日(金)

ネット炎上のかけらを拾いに

2019年3月1日

 中身のないインフルエンサーに価値が付与され続けるSNSバブルの時代。

(CASEZY/iStock/Getty Images Plus)

「たくさんの人に勇気や夢を与えたい!!」

 先日、「ヒッチハイク中学生」がツイッター上の大きな話題となった。国内をヒッチハイクしてまわった中学生(15歳の少年)が、今度は同じ手段でアメリカを横断すると宣言。すぐに「無謀だ」といった意見が多く寄せられ、実際に彼はその後数日で未成年であることを理由に保護され、保護者の迎えによって日本に帰国している。

 中学生が批判されたのは、事前準備の少ない無謀な旅のように見えたことに加え、「1000RTで#裸足でアメリカ横断します」「1いいねにつき10分間靴を履くことができます」など、ツイッターのRT数やインスタグラムの「いいね」数を稼ぐために安全を切り売りするような投稿を重ねていたことだった。

 根は素直な少年らしく、アメリカ横断が失敗に終わりツイッター上で炎上したことについても自分なりに分析している。彼は炎上の理由について「中学生という若さによる心配」「アメリカ、ヒッチハイクの危険さ」「無計画による心配」「親はどうなっているんだ系」の4点をツイートしているが、それに加えてツイッターおじさんやツイッターおばさんがイラッとしたのは、アメリカ横断の理由を「同世代に限らず、たくさんの人に勇気や夢を与えたい!!」とツイートしてしまう自意識のぶん回し行為だろう。

 見てみて、オレオレ!すごいでしょ!……すごくない? 多くの大人が、程度の差はあれど一度や二度はそうやって自意識を振り回し失敗したことがある。当時ツイッターやインスタグラムが存在しなかったのが幸いだと感じている大人は少なくないはずだ。ヒッチハイク中学生は、痛い青春の記憶を蘇らせる存在でもあった。

SNSで肥大化する自意識

 さて、この中学生に優しい苦言を呈したのがAV女優の戸田真琴さんだった。彼女は「SNSで死なないで」(https://note.mu/toda_makoto/n/n71be988f6b05)というタイトルで2月16日にブログを更新している。

 ヒッチハイク中学生のプロフィールが、いわゆるインフルエンサーと呼ばれる人たちや最近話題のオンラインサロン運営者のそれと酷似していることを指摘。中身が見えず、ただ「注目されたい」「有名になりたい」欲が勝っているように見えることをズバリと刺している。

 そうなのだ。「何でもいいから情熱大陸に出たい」系の人は昔からいた。10年ほど前まではせいぜい身近な人に対して自意識を振り回すぐらいですんでいた「何者かになりたい人たち」が、SNSを通じて可視化される社会になっている。


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