田部康喜のTV読本

2019年3月6日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 中の占いが終わると、代々木の携帯に、Dチームが企画したコンサートの会場の部下から緊急連絡が入る。ピアニストが、代々木がこない限りは、演奏をしない、というのだった。そのピアニストこそ、代々木が若いときに一生懸命に説得して、舞台に上げた人物だった。代々木は、中の言葉を彼に投げかける。「才能のない人間なんてひとりもいないんだから。あきらめずにやることを才能っていうんだよ」と。ピアニストは若き日に代々木の励まされた思い出を語って、演奏することを了解する。

 悩みから解き放たれた社員それぞれが、職場に回ってきた掃除係に「なにかほかに捨てるものはありませんか」といわれて、それまでこだわっていたモノを捨て去るのも「お約束」である。代々木は、社長のスケジュールが書き込まれたファイル式の手帳を捨てるのだった。

 イベントのコンサートが終わって、居酒屋での打ち上げとなる。代々木が挨拶するが、中を除いたDチームのメンバーは、徹夜続きで居眠りをして聞いていなかった。涙に目を閉じた代々木が、目を開けたときの場面は、ほのぼのとしておかしい。

構成の巧みさとリズム感の良さ

 脚本の遊川和彦といえば、大ヒットドラマの「家政婦のミタ」(2011年、日本テレビ)や「過保護のカホコ」(2017年、同)の作品で知られる。そのドラマの展開は一見、パターン化しているともいえるが、構成の巧みさとリズム感の良さといってもいい。ドラマのタイトルの意味がすぐにはわからないのもいい。

 ヒロインの杉咲花演じる中は、かつては天才少女であり、教団化しているともいえる母親のもとから逃げて、派遣社員になった。飲み会やイベントなど、初めての経験があると自撮りして「初めてなんで」というのも、「お約束」でほほえみを誘う。

 映画「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太監督、2016年)で、主演の宮沢りえの義理の娘役を演じて一気に注目された、杉咲花だった。実の母はろうあ者だった。宮沢が娘役の杉咲に幼いころから手話を学ばせて、実母と海辺の町で再会するシーンは美しい。

 ドラマの世界でも、「花のち晴れ~花男 NextSeason~」(2018年、TBS)の女子高校生役が記憶に新しい。NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」では、ストックホルム五輪に、マラソンの金栗四三とともに参加する陸上選手の三島弥彦家の女中役である。可憐な若手女優として着々と地歩を固めている。

 「ハケン」はいよいよ最終回に向かって、中と母の葛藤が描かれていく。そして、中の悩みとは何か。それを解いていくのは誰なのだろうか。


  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る