2024年12月9日(月)

田部康喜のTV読本

2019年3月6日

(Brand X Pictures/Stockbyte/Getty Images Plus)

 テレビ朝日「ハケン占い師アタル」(毎週木曜よる9時)は、杉咲花を謎の派遣社員・的場中(まとば・あたる)にキャスティングして毎回、脚本の遊川和彦は観る人々をカタルシスに導いている。少女時代に天才占い師といわれた、中は派遣先のイベント会社の社員たちの悩みを占いによって次々に解決していく。

 ドラマは、そうした社員たちの悩みが引き起こす事件をきっけとして、中がひとりひとりを会議室に引き込んで「わたしが視ます」と過去を透視しながら、しかりつけるように再生を助言する。こうした展開はパターン化していて毎回変わらない。しかし、物語に飽きはこない。ラストの中の助言がどんなものになるのか、期待しながら最後まで一気にみせる。

いくつかの「お約束」もほほえましい

 第7話(2月28日)は、中が派遣された「シンシアイベンツ」Dチームなど4チームを率いる部長・代々木匠(及川光博)が悩みの主である。本社から出向してきた、代々木は本社復帰を目指して、常に社長に寄り添う「アテンド」を繰り返している。朝はエレベーターの前で待ち受けて、社長室がある10階まで同行する。社長とその家族の誕生日には、プレゼントを欠かさない。

 本社復帰がいったんは決まりかけた代々木だったが、点数稼ぎに勝手に人員整理に乗り出したことがばれて、本社復帰どころか、Dチームだけを担当する名ばかりの「担当部長」に降格させられる。出世ばかりに精いっぱいで家族との交流もほとんどないに等しい。

 「わたしがあなたを視ます」と、中からいわれて会議室に引っ張り込まれた代々木は、苦しい胸の内を打ち明ける。

 「アテンドによって、会社が円滑に進めばいいと思ってやってきた。なぜ、誰も俺を認めないのか。好きになった女に告白してもだめだった」

 中は透視すると、光が差して、大きな中円のなかに、占い相手の過去が見えてくる。光の輪を乗り越えて、中が過去のなかに入っていくのが「お約束」である。代々木は入社早々、イベントの企画をやっていた。楽屋まで来たのに、自信がなくて舞台に出られないピアニストを、代々木は一生懸命に励ましていた。中はこういうのだった。

 「あんたのアテンドって、アピールじゃん。アテンドは見返りなんか求めない。部下や家族を認めなければ。認めることがアテンドなんだよ。あんたは、なまけもの、逃げてるだけなんだよ。才能のない人間なんてひとりもいないんだから。あきらめずにやることを才能っていうんだよ」と。


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