石山寺の僧侶によるお清め式も
ロビー中央の大階段を上がりきって右の通路をたどっていくと、アジア美術部門の入り口がある。最初の数部屋には古代中国美術が展示され、突き当りを左に曲がると日本ギャラリーへのガラス戸がある。
ドアを開けて入った正面には、石山寺の本堂が再現されていた。滋賀県大津市にある寺で、紫式部がここに来た際に源氏物語の執筆のインスピレーションを得たといわれている古刹である。ポスターに使用された紫式部の肖像画も、ここに保存されているという。
祭壇の上には仏像が配置され、照明が落とされて神秘的な雰囲気が演出されている。
源氏物語には、大陸から日本に伝来した仏教の精神が強く反映されていることがパネルに英語で説明されていた。一般公開の1日前の3月4日には、この石山寺から招かれた僧侶たちによる記念法要も行われたという。
「篤姫」のビデオも上映
さらに奥へと進んでいくと、「源氏物語」を題材とした、様々な時代の美術品がスペースにゆとりを持って展示されていた。日本ギャラリーの中に常設されている書院作りの畳の間には御簾がかけられ、中には平安貴族調の衣装を身につけたマネキンが飾られていた。
また内側に源氏物語の一場面が金箔で描かれた豪華な駕籠は、天璋院篤姫が13代将軍、徳川家定に嫁いだ際に使われたものだという。長年行方不明だったが、しばらく前にスミソニアン博物館で発見されて話題になったものだ。
NHK大河ドラマの、篤姫輿入れの場面が場内のモニターに繰り返し流れ、時代は違うといえどもかつての日本の支配階級の暮らしの様子を、おとずれた来客たちは、熱心に見入っていた。