ハイライト、俵屋宗達の屏風
さていよいよ展示会の中心部へと向かうと、本展示会の最大の目玉である国宝「源氏物語関屋および澪標図屏風」が飾られていた。「風神雷神図」で有名な、江戸時代前期に活躍した俵屋宗達の手によるものである。東京の静嘉堂文庫美術館所蔵のもので、これは最初の6週間のみの展示だという。
これ以外にも数点の屏風、蒔絵の工芸品、豪奢な着物などが並ぶ。美しく色とりどりの絵がかかれた貝合わせの並んだケースの前には、西洋人の女性数人が魅入られたようにたたずんでいた。
浮世絵を経て現代へ
続きの間へと進むと、今度は数点の絵巻物、浮世絵が並んでいる。徐々に時代が新しくなると、最後の部屋には少女マンガ家、大和和紀氏による、源氏物語を原作とした「あさきゆめみし」のカラー原画7点が並んでいた。
ここのモニターには、大和氏が鉛筆のデッサンから最後の色づけまでと仕上げていく作業のプロセスが映像として流れている。その筆遣い、色の選び方の繊細さなど、紛れもない立派な芸術作品である。
いまや世界の熱い視線が集まる日本のMangaで締めくくりとは、メトロポリタン美術館もなかなか心憎い演出だ。
オープニングとはいえ、平日の日中でそれほど混雑することなくゆっくりと作品を見て歩くことができた。
この展示会オープンに先駆けることわずか10日、高校時代に源氏物語に魅せられたことがきっかけで日本文化と文学評論の第一人者となった、ドナルド・キーン氏が96歳で亡くなった。東日本大震災をきっかけに、ついには日本に帰化したキーン氏に捧げるかのようなタイミングとなった「The Tale of Genji」の展示会だった。
今から6月までの間にニューヨークを訪れる方々は、お見逃しなく。
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